旅に出る。
日本は島国だから、外国に行くときは飛行機に乗ることがほとんど。出発の数時間前までに空港に行き、チェックインを終え、荷物を預け、保安検査を受けて、出国する。
海外での体験そのものはもちろんだけれど、出国が近づくにしたがって沸き上がる「ワクワク感」が好きなんだ。
自宅を出て、空港に向かう。
長崎空港に就航している国際線はとても限られているから、海外に出るときはもっと大きなハブ空港を利用することになる。今回は日本の玄関、成田空港だ。
長崎駅前から空港行きのバスに乗る。バスは長崎市内を少しだけかすめ、トンネルに潜り込み、やがて高速道路へと達する。何度も通った道だけど、行き先が海外となると思いは複雑だ。
未だ見ぬ人々に出会うことができるという期待。また無事にこの街に戻れるだろうかという不安。
ひとつの言葉では言い表せないほどの感情が入り乱れている。そして、自分はこんなに感情豊かな人間だったのかと気づく。
海外に出ると一種のトランス状態のようなものになるけれど、その源泉はこのように入り乱れた感情なんだ。きっと。
この日は、空に水色の絵の具を流し込んだような、疑う余地のない快晴。
無事に飛行機が飛んでくれることを祈っていたけれど、何の心配もいらなかったみたいだ。ひとまず東京までは行ける。第1関門突破。
飛行機に乗り込み、シートベルトを締める。やがてドアが閉まり、プッシュバックされ、ジェットエンジンを噴射して、飛行機は進み始める。
外では整備士たちが手を振っている。グッバイウェーブと呼ばれるこの光景も、日本特有のものなのかもしれない。
そんなことを思いつつ、海外に向かっているんだという事実を噛み締める。
海外に飛び立つ直前。
羽田からバスで成田に移動する。日本の玄関からはあらゆる場所に飛行機が飛んでいるから、この空港を利用する人の国籍はさまざま。
日本は時間の流れが早いから、待つのが苦手な人が多い。自分はそうではないと思っていたけれど、実は根っからの日本人だったみたいだ。
成田空港でバスを降りるとき、インド人らしき方が通路を塞いで、網棚の荷物をのんびりと取り出していた。
その2つ後ろにいた僕は、何気なく、本当に何気なく、「早く出してくれないかなー」と思っていた。別に急いでいたわけではないのに。
すると、そのインド人と、僕の前にいた女性が
Sorry. —— It’s OK.
という会話を交わした。
僕ははっとした。それと同時に、自分の脳裏によぎった考えを恥じた。それがいくら見ず知らずの人であっても、目の前の人を思いやる心を持つのは、人として当たり前のことじゃないか。
自分に甘く、他人に厳しい。この社会にはどこかそんな空気があるけれど、いつの間にか、少しも抵抗することなく、そんな空気に染まっていた自分が恥ずかしくなったんだ。
海外に出ると、こんな風な「はっとする体験」が目白押しだ。それがポジティブなことでも、自分のことが嫌いになるようなことであっても、「気づき」であることには変わりない。
自分と向き合うための新しい視点を手に入れることができる。これこそが、海外に飛び立つ前のワクワク感の正体なんだ。
バスを降り、スーツケースを受け取って、バスの方を振り返りながら、そう思った。
日本の玄関はとても煌びやかだ。眩しすぎて、自分なんかがこんなところにい存在していいものなのか、という思いすら芽生えてくる。
チェックインを終え、荷物を預け、両替を済ますと、いよいよ日本から脱出だ。
この先どんな旅が僕のことを待っているのだろうか。すべてがうまくいくとは思っていないし、むしろ困難が立ちはだかった方が面白い。だってその方が自分が成長できる気がするから。
またこの国に戻ってくるときには、どんな自分になっているだろうか。きっといろんな気づきがあって、視野が広がって、他人に優しくできる人になっているだろうか。
少しだけ残っていた不安はここに置いていく。期待だけを両手に抱えて、心の中をワクワクで満タンにして、出国ゲートに向かう。
だから、旅は楽しい。
そして、この記事につながる。少しも色褪せることのない、素敵な旅になった。
アメリカに行ってきます。 – starnote*
さらに続きはこちらから。収穫しかなかったから、たくさん記事を書いた。
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