自由なカメラを突き詰めた先にあったもの。
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「旅カメラ」FUJIFILM X100VI
FUJIFILM X100VIを使い始めてそろそろ1年が経とうとしていますが、いまだにそのコンセプトに共感しまくる毎日を過ごしています。コンパクトな筐体の中に最新のスペックを、フラッグシップの技術を、出し惜しみせずにこのサイズに収めたと。
旅に行くときも、もうX100VIが1台だけあれば十分です。飛行機や新幹線で行くような旅だと荷物が少ない方が嬉しいから、X100VIを首から掛けておけば、旅先の印象的な光景を、その空気感そのままに写真の中に閉じ込めることができます。
しかしながら、コンパクトだから画質がイマイチ——というわけでは全くなくて。フラッグシップ譲りの技術を搭載しているだけあり、その画質や描写力に息を呑む瞬間が多くあるんです。だから、心が動いて写真を撮りたい瞬間が多く訪れる旅にうってつけで、最高の「旅カメラ」というわけ。
クロップ耐性、すごい
X100VIを使っていて、最も感動したのがクロップ耐性の高さです。特に、横写真をクロップして縦写真にしても、長辺5152pxも確保できるという点が驚異的でした。
一般的に、トリミングをすると画素数が大きく減り、写真の解像感が損なわれることが多いです。しかし、X100VIでは元の画像サイズが 7728 × 5152 px であるため、横構図で撮ったものを大胆に縦構図にクロップしても、3435 × 5152 px もの領域が残ります。このおかげで、縦写真として十分な画質を維持しながら、思い切ったクロップが可能です。
これは単に「高画素だからクロップできる」という話ではありません。コンパクトなカメラがここまでのクロップ耐性を手に入れてしまうと、もうこれ1台で旅のあらゆる場面に対応できるほど、構図の自由度が劇的に広がるのです。
クロップしても画質が落ちない理由
X100VIがここまでクロップ耐性を持つ理由は、40MPの高解像度センサーにあります。
- 従来のX100シリーズ(2600万画素)では、ここまで大胆なクロップは難しかった。
- X-Trans CMOS 5 HRセンサーの恩恵で、細部までしっかりと解像する。
- クロップ後も長辺5152pxを確保できるため、ブログやSNSはもちろん、ちょっとした印刷用途(L版など)でも十分な画質を維持できる。
これにより、「撮影時に横か縦かを厳密に決める必要がない」という、新しい撮影スタイルが生まれます。
横写真を縦写真にクロップするメリット
X100VIのクロップ耐性を活かすことで、横構図で撮影しておいて、あとから縦構図に変更するというスタイルが可能になります。
実際に役立つシーン
- 風景写真 :広い横構図で撮影し、後で構図を整理。
- ポートレート :一人だけを切り取って縦構図に。
- スナップ撮影 :瞬間を逃さず撮り、あとでベストな構図を選ぶ。
- 建築撮影 :余計な部分をクロップして整理。
特に旅先でのスナップ撮影では、「とりあえず横で撮っておいて、後で調整する」 という撮り方ができるのが非常に便利です。
実際の作例と使用感
まずはこちらの4枚をご覧ください。これらは最初から縦構図で撮ったものでしょうか? それとも、横構図からクロップして縦構図に変更したものでしょうか? ちょっと想像してみてください。
正解は、4枚とも横構図からクロップして縦構図に変更した写真です。どれか1枚くらい、最初から縦構図の写真が入っていると思いませんでした? 個人的には、そう思っても違和感ないくらい、すごく自然に仕上がっているように思うし、このままブログやTwitterで使っても全く問題ありません。
では、ちょっとここで、実際のクロップの過程を見ていただきましょう。
どれも横構図で撮影したので、横向きの写真のイメージが頭の中にある状態。そこから発想を転換して、大胆に両サイドをカットし、縦構図を生み出します。このような実際の作業を思い浮かべながら、ご自身が撮られた写真にも置き換えることができないか?というような視点で読んでみてください。
事例 No.1『海ほたるから臨む快晴のアクアライン』
風景写真の事例です。海ほたるからアクアラインの木更津側を撮った写真ですが、撮影時は横構図を選びました。(本当は何枚か撮っていて、そのうち縦も横もあるけれども、事例として横構図の写真を持ってきました)
この写真、アクアラインの橋が先の方に延びてゆくのを際立たせるために、縦構図にするのが有効です。そのため、両サイドをばっさりとカットして、このような縦構図の写真に仕上げてみました。横構図の海が広がっている感じもいいけれども、アクアラインが目立つ縦構図もいいでしょ?
事例 No.2『ポーラ美術館の犬の彫刻』
建築写真においても、被写体を際立たせるために縦構図を使うのが有効です。
この写真、もともとは横構図で被写体以外の余計な部分が大きく入ってしまっていたんです。そのため、大胆に縦構図にすることで、被写体の彫刻が際立つようになりました。
事例 No.3『沼津・内浦漁港を岸壁から臨む』
沼津の内浦漁港から撮った写真。横構図だと、ただ目の前の風景を適当に写した風景写真だったけれど、大胆にクロップして縦構図にすることで、「かっこいい漁船」というテーマが生まれます。
このように、X100VIの35mmという画角ゆえに冗長になってしまうような場面においても、縦構図へのクロップは非常に有効です。十分な画素数を維持しながら、それができるのがX100VIのいいところ。
事例 No.4『河津桜と菜の花が彩る道』
この写真は、あえて中心からずらしてクロップしてみました。
元の横構図も奥行き感があっていい写真だと思うけれども、ブログやSNSだと、人の顔がはっきりと分かる形で写り込んでいる写真は使いにくいんですよ。そのため、使えるところを残しながら、このような形でクロップしました。
結果として、左側にしかない菜の花と上空の河津桜との対比が美しく、さらに通りの賑わい具合が明らかに伝わる写真になったように思います。
以上のように、旅先でのスナップや風景撮影では、横で撮影しておけば、後から縦に変更できるので構図の選択肢が増えます。これにより、1枚の写真から複数のバリエーションを作ることが可能なのです。
横方向を維持したクロップも有効
もちろん、X100VIに最初から備わっている「デジタルテレコン」などを利用して、50mm / 70mmの写真を最初から作り出すこともできます。こうやって、1台のカメラで複数の焦点距離を扱う感覚を味わえるのです。
- 40MPのセンサーを活かし、デジタルズーム的な使い方も可能。
- 50mmや70mm相当へのクロップでも、十分な画質が確保できる。
- 構図の自由度が格段に広がり、撮影時の制約が減る。
これにより、「単焦点レンズの制約を感じない撮影」が可能になります。願わくは、この撮影設定をRAWにも反映していただけると嬉しいのですが…
ただ、この記事ではもう少し踏み込んで、横構図の写真を大胆にクロップして縦構図に変更する(もちろん、縦構図の写真を横構図にすることも可)ことを提案した次第。かなり細かい話だけれども、用途やニュアンスはデジタルテレコンとはちょっと違うように感じます。
まとめ
繰り返しますが、X100VIのクロップ耐性は、単に「高画素だからトリミングできる」という話ではありません。横構図の写真を縦構図に変えても、長辺5152pxを確保できるという自由度が、撮影スタイルそのものを変えるのです。
- 横構図で撮っておけば、後から縦構図に変えられる。逆も然り。
- クロップ後も長辺5152pxを維持できるので、画質の劣化が少ない。
- スナップ撮影やポートレート、建築撮影など、さまざまなシーンで活用可能。
「撮影時に構図を決めきらなくてもいい」という新しい自由を与えてくれるX100VI。このカメラが持つ可能性は、これまでのコンデジの枠を超えています。
言ってみれば「自由な旅カメラ」。旅先では、目の前の風景をカメラに収めることにだけ集中していれば、家で落ち着いて構図を考えることができる。こんな自由を手に入れるのは罪だろうか。