午前8時、さまざまな言語の飛び交う福岡空港国際線ターミナル。
パスポートを片手に、周りをキョロキョロしながら入ってくる一人の男。髪には軽くパーマを当て、デニムジャケットを羽織り、灰色のバックパックを背負い、足下は黒いブーツで固めている。
彼は吸い込まれるようにターミナル端のカウンターへ。未だ見ぬ世界への期待を抱えて——。
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この旅の発端の話をすると、バニラエアの「わくわくバニラ」セールで、航空券が(片道だけ)安く手に入ったこと。
予約したのは福岡空港と台北近郊の桃園国際空港を結ぶ便。チェックインの都合上、遅くとも8時くらいまでには空港に行かないと。
この時間帯に長崎から福岡空港に向かうには、JRでは間に合わないから、車か高速バスしかない。
弾丸スケジュールの前に運転して疲れたくなかったのと、せっかくのLCC旅は安く済ませたかったので、高速バスで移動することにした。
それでも、時刻表によると、チェックインの締め切りに間に合わないかもしれない、ギリギリのところらしい。
だけど、福岡空港国際線ターミナルは比較的小さいので、端っこに追いやられがちなLCCのチェックインカウンターにも、すぐにたどり着けるに違いない。
無事に出国手続きを終え、搭乗口にやってきた。何か食べたかったけれど、時間が無かったので、おにぎりと水だけ買ってその場で食べた。
乗り込んだ飛行機はすぐに飛び立ち、福岡上空を大きく旋回する。台湾への道のりは、まだまだ始まったばかりだ。
遡ること、約4時間。長崎を出発したのは、まだ街が月明かりに照らされている時間帯。
眠い目をこじ開け、動かない体に鞭を打って、バスに乗った。
その長崎を、その日のうちに、空の上から見下ろすことになるとは思いもしなかった。なんだか見慣れた地形や構造物が、下界にはあった。
美しい空のグラデーションをキャンバスにして、飛行機は一直線の痕跡を残していく。その痕跡は、風に飛ばされてすぐに消えてしまう、儚いものだ。
いや待てよ。地上から見ると空がキャンバスだけど、空から見ると地上がキャンバスになる——そんなどうでもいいことを考えながら、狭い機内でくつろいでいた。
フライトは2時間半。往路は偏西風が向かい風になるから、時間がかかる。朝早く鞭打って出てきたツケが回ってきたので、しばらく眠ることにした。
海外に向かう飛行機で眠るのは好きだ。だって寝て起きたら、もといた場所から大きく移動している。まるでワープのよう。
眠りから覚めると、地上の様子が目に入る。建物の外観が日本のものとは明らかに異なる。異国に来たんだなーと実感する瞬間。
桃園国際空港に上陸。
建物の雰囲気、色合い、空気の匂い、聞こえてくる言葉、どれをとっても日本とは違う。少しだけ似ているけれど、やっぱり違う。その違いを噛み締めながら、群衆についていく。
いよいよ入国審査。緊張するね。
通過すると外国の域内だから、自分が外国人だということを自覚しないと。そのスイッチを切り替えるのに適度な緊張感を持って臨もう。
外国人用の窓口でEasyCard(Suicaみたいなやつ)と桃園MRTの切符を買う。コイン型の切符ってすごいな。
MRTで台北市内に向かう。終点の台北駅で降りる。
地下街を歩く。明らかに雰囲気が違う。ここは日本ではない。
地上に出てみたくなったので、エスカレーターを上る。
自分がどこにいるのかまったくわからない。普段道に迷うことが無いからか、この感覚がゾクゾクする。癖になりそうなくらい。
ここに留まってもさらに迷うだけなので、来た道を少しだけ戻る。地下鉄に乗ろう。
台北から数駅。台湾の原宿とよばれる「西門町」に来てみた。人通りは多く、なんだかみんな楽しそうだ。確かに原宿に似ている。
左奥にあるレンガの建物(日本統治時代に建てられたもの)を見たかったけれど、イベントやってて人混みの中に入っていけず、やむなく断念。
次はどこに行こうかな?
計画を立てずに、そのときの気分で訪問先を巡るのが僕のスタイル。その方が、思いがけない出会いがあったりして、その国のことをより深く知ることができるような気がするから。
また地下鉄に乗ろう。あ、そうだ、目星をつけておいた、あのお店に行こう——。