長い目で向き合おう。
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カメラが好きな方なら、誰しも経験があると思います。「新しいカメラが発売された」「スペックが進化している」そんな情報に触れるたびに、つい気持ちが揺れるものです。
しかし、そのたびに新しいものに飛びつくのは、本当にいい選択なのでしょうか? この記事では、1つのカメラを大事に使うことの意味について考えてみます。
技術の進化と買い替えの誘惑
カメラは常に進化し続けています。数年前のハイエンドモデルが、今ではミドルクラスと同等の性能になっていたりします。最新機種のオートフォーカス性能が向上し、高感度ノイズが減り、動画性能が飛躍的に向上するたびに「そろそろ買い替えどきでは?」と考えてしまうこともあるでしょう。
正直なところ、僕も何度もそんな誘惑に駆られました。今も手元には2018年発売のソニーα7 IIIと2020年発売のFUJIFILM X-T4があり、引き続きこの2台をメインカメラとして使っています。新しいモデルへの買い替えを何度か検討しましたが、結局踏みとどまっているのです。
カメラに求めるものは性能だけではない
もちろん、新しいカメラを購入することで得られるメリットは大きいです。新しいセンサー技術やAIを活用したオートフォーカスが導入されるたびに、その魅力に惹かれる気持ちはよくわかります。メーカーをまたいでシステムごと乗り換える選択肢も理解できます。
しかし、カメラは単なる機材ではありません。それを使い続けることで生まれる愛着や、手に馴染む感覚こそが、写真の質を左右する部分もあるのではないでしょうか。個人的には、こっちのメリットを重視したいのです。
また、長く使えば使うほど、どのボタンがどこにあるのかを無意識に把握し、自分の思い通りに操作できるようになります。この感覚も、いい写真を生み出す土壌になるのではないかと考えています。
道具との関係性が写真に影響を与える
「道具が手に馴染む」とはよく言われますが、手に馴染んだカメラで撮る写真は、どこか自分らしさが宿るように感じます。
例えば、新しいカメラを購入した直後は、どんなにスペックが優れていても使いこなすまでに時間がかかります。設定を変えるのに手間取ったり、慣れない操作で撮影に集中できなかったりします。そんな期間を乗り越えた先に、ようやくカメラが自分の手足のように動く瞬間が訪れます。
そう考えると、新しいカメラを次々と買い替えるよりも、1つのカメラをしっかりと使い込むことに価値があるのではないでしょうか。長く使うことで、自分にとっての「ベストなセッティング」が確立され、カメラを意識することなく、撮影そのものに集中できるようになります。
趣味のカメラは自分の感性を大事に
もちろん、仕事で使う場合は「最新の機材を揃える」ことが必要な場面もあります。プロの現場では、スペックの進化が仕事の成果に直結することもあるため、新しいカメラを導入する意義は大きいです。
しかし、趣味のカメラに関しては、必ずしも最新が最良とは限りません。スペックだけでなく、そのカメラで写真を撮って楽しいか? 使っていて愛着を持てるか? 自分が納得できる写真を撮るためには、このような心理的な効果が重要になる場面もあるのです。
僕はこれからも、手元のカメラを大事に使い続けるつもりです大切に使い続けることで、カメラとの関係が深まり、よりよい写真が撮れるようになると考えています。
カメラとともに成長する体験
長期間同じカメラを使い続けることで、機材のクセや特性を深く理解できるようになります。例えば、どの設定が自分に合っているか、どの条件で最も美しい写真が撮れるのかが、自然と身についてくるのです。カメラは単なるツールではなく、共に成長する相棒のような存在になっていきます。
また、長く使っているカメラには思い出が刻まれます。旅行に持ち出したときのエピソードや、特別な瞬間を切り取ったときの感動。そうした経験が積み重なり、カメラそのものが自分にとって唯一無二の存在となります。
僕のα7 IIIは、単なる撮影機材ではなく、自分自身の成長とともに歩んできたカメラです。たとえば、アメリカのニューメキシコ州・アルバカーキに1週間ほど留学していたとき、このカメラを持って行き、たくさんの写真を撮りました。異国の空気、光、色彩を記録しながら、写真というものの奥深さを改めて実感しました。
台湾にも持って行き、活気あふれる街並みや、美しい夜市の光を写し取りました。国内でも、京都や神戸、そして今住んでいる東京・横浜、以前住んでいた長崎など、さまざまな場所で自分が目にした風景をこのカメラと一緒に記録してきました。
僕にとってα7 IIIは、単なる機材を超えた存在であり、自分の経験や感性を映し出すための大切な相棒なのです。売るという選択肢はあり得ないし、これからも僕の目の一部となって、世界を記録し続けてほしいと思っています。
カメラと自分の関係を改めて見つめ直す
上記のように、僕にとってα7 IIIも、もちろんX-T4も、もうすでに自分の目や脳の一部なのです。自分と同じ風景を、光という形でレンズの中に取り込み、それを焼き付ける。それが写真を撮るという行為です。
スマートフォンの普及によって写真撮影はとても身近なものになりましたが、カメラを使うことにはもっと奥深い理念や思想があります。僕は、その本質を感じながら写真を撮ることが好きであり、そのために、自分の思い出が刻まれたカメラを使い続けることに意味があると考えています。
時間をかけて築いてきたカメラとの関係は、単なる撮影機材を超えたものになっています。新しい機材も魅力的ですが、それ以上に、長年使い込んだカメラだからこそ撮れる写真がある。そのことを大切にしたいのです。
愛用の機材を長く使いたい
1つのカメラを長く大事に使うことで得られるものは多いです。
- カメラに対する愛着が生まれ、撮影が楽しくなる
- 手に馴染むことで、より直感的に写真が撮れる
- 買い替えの迷いから解放され、撮影そのものに集中できる
- 機材の特性を深く理解し、自分の表現の幅が広がる
- 思い出が積み重なり、カメラそのものが特別な存在になる
新しいものが必ずしも最良ではない。そう考えると、今手元にあるカメラをもっと大切にしたくなります。僕にとって、カメラは単なる道具ではなく、思い出を切り取るパートナーなのです。