ちょうど10年前、君は人生のどん底で、センター試験を受けていましたね。
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真面目に過ごしてきた中学時代の反動で、何もかもが嫌になっていた高校3年間。県内で一、二を争う進学校に通っていた君の周りには頭のいい奴らばかりで、自分が嫌になっていたんだと思います。
同級生同士で成績を競わせるような学校の指導方針が、争いごとに興味がない君の性格と反発し合って、勉強に対するモチベーションがひどく落ちていたよね。瞬く間に成績は急降下し、ついには勉強する意味を見出せずにいましたね。
それでも欲張りな君は、高校3年生の成績で入れる学部には納得がいかず、もっと上を目指したいと思っていました。だから浪人するという選択をしたのは、とても軽い気持ちだったはずです。
でも、その浪人生活が、まさか2年間にも及ぶことになるとは思っていなかったと思う。たった1年間、予備校に通って言われたとおり勉強すれば、それなりの学部には行けると考えていたはずです。
予備校では、朝から夕方まで授業を受けて、夜10時まで自習をして帰ってくる。それが理想とされていたのに、予習もせずになんとなく授業を聞き、十分な復習もしてなかったよね。甘ったれるのもいい加減にしなさい。
だから結局、1年だけでは結果を残すことができずに、もう1年同じ勉強をすることになりました。ひとつだけ褒めるすれば、センター試験の点数を200点近く伸ばしたことでしょうか。元が低すぎたことの裏返しでもあるけれども。
2年目は、少しは学習したのか、それとも2周目だったから慣れてきたのか、1年目よりは順調に行きました。でも模試の点数は足りず、本番までどれだけ伸ばせるかにかかっていましたね。追い込まれないとやる気が出ない性格は、10年後でもしっかり引き継がれていますよ。
さて、今日あった1日目、手応えありましたか? 英語はたぶん大丈夫だったと思うけど、苦手な国語は? ちゃんと登場人物の気持ち、読み取れた?
明日は2日目ですね。がんばって勉強してきた数学・物理・化学は、きっと大丈夫。落ち着いて、満点を狙いにいこう。
あ、10年後からやってきた未来の君という立場からアドバイスしてあげると、今回はちゃんとうまくいくはず。申し訳ないけど、未来が変わってしまうと大変だから、あんまり詳しく教えられないんだ。ごめんよ。
でも気になるだろうから、少しだけチラ見せしておこう。
君はこれからの10年間、いろんな人との出会いに恵まれ、親友が死に、いくつかの恋愛を経て、無事に大学を卒業し、薬剤師免許を取り、まもなく博士になろうとしていて、4月からは日本の中枢で働くことになります。
高校生の頃、ケータイのカレンダーの日付を無闇に進めてみては、「いったいこの頃は何をしているんだろうか」と、物思いにふけることがありましたね。その日付は2019年を指していました。
その年を迎えた今、君はちゃんと生きていて、誰かのために必死にキーボードを叩く生活を続けています。予想していた未来とは違うかもしれないけれど、今の君はやりたいことをやっているよ。
失敗だろうと成功だろうと、そのすべてが君の人生経験のひとつとして、確かな爪痕を残す。その痕にはどこからでもなく種が飛んできて、長い時間をかけて花を咲かせ、めぐりめぐって誰かの役に立つことになる。
だから、どん底だからといって自暴自棄にならず、前だけを見て受験に臨んでほしい。どうかがんばって。しっかり頼むよ。
10年後の君より