学会発表の準備では、スライドの作成よりも先にストーリーを練るべし。

わかりやすいプレゼンをしたい!って思っていても、なかなか難しいですよね。

どうすればわかりやすくなるのか全く見当がつかなかったり、どこから手をつけたらいいのか全然わからなかったり。自分ではわかりやすいプレゼンをしたつもりなのに、聴衆の反応が芳しくないこともあります。

それ、もしかして、スライドから作り始めていることが原因なんじゃない?


薬学系博士課程の大学院生です

本題に入る前に軽く自己紹介を。

僕は現在、国立大学薬学部の博士課程に在籍しています。4年間通うカリキュラムの4年生です。あと3か月ほどで修了です。

在学中は、国際学会でも英語での発表を行ったりして、それなりに「学会発表」というものを経験してきたつもりです。この記事に書いている内容は、その中で試行錯誤してきた結果です。


学会発表の準備をするときは、スライド作成よりも先にストーリーを練る

研究は、仮説を立ててそれを証明し、得られた成果を発信することで成り立っています。この記事では「研究成果の発信」のうち、学会における口頭発表について取り上げています。

仮説を立てて実験を行い成果を出すというのが得意でも、それを「誰かに伝える」というフェーズとなると、一気に苦手になる人が多くなるような印象です。

論文だと文章力の問題があるし、学会発表だとプレゼン力の問題にぶち当たる。しかし、人前で話すのが苦手な人でも、事前にしっかりと準備をすることで、わかりやすいプレゼンを行うことができます。

つまり、その場でうまく話すのはオマケみたいなもので、事前に試行錯誤したかどうかが大きなポイントになります。特に「スライドを作り始める前のストーリー構築」が重要なんです。


「口頭」発表だということを忘れない

多くの人は、スライドを先に作って、それっぽい順番に並べて、「スライドに合わせた話」をしてしまう。スライドがメインで、話をしている自分がサブ。

しかし、「口頭」発表だということを忘れてはいけません。つまり、メインとなるのは発表者が話している「言葉そのもの」なんです。スライドには言葉では説明しにくい内容を記しておくというスタンスでOK。

だから、メインのものから先に作るのは当然だと思うんです。だから先にストーリーを練る必要がある。


ちなみに、仮説の証明や成果の発信について、概論的な記事は以前書きました。研究に詳しくない方は、まずは全体像から。

博士課程をイメージしてみよう②|「研究」とは? – starnote*
研究者を目指す者たちへ。 東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所が実施した「子どもの生活と学びに関する親子調査2015」では、将来なりたい職業の第3位に〈研究者・大学教員〉がランクインしました。 現在博士課程に在籍していて、こうしてブログメディアを運営している僕としては、このような結果を見ると他人事のように思えないのです。持てる知見のすべてを文章にして提供したいと思ってしまいます。 つまり、子どもたちに限らず、大学院に進学しようか迷っている大学生などに対しても、研究のことを噛み砕いて伝える。このような取り組みもまた、博士課程に在籍する大学院生に課せられた使命だと思うのです。 先日は、博士課程進学に関する「お金」と「時間」の話について書きました。せっかくなので、〈博士課程をイメージしてみよう〉というシリーズとして、いくつかのトピックについて書いておきたいと思います。 今回は〈研究とは何か?〉ということについて。まだ2回目なのに本質的な話題に入っていきますが、先に書かないと次の話題が書けないので、ここから始めます。 一般的な「研究」との乖離? 就活においてよく聞く「企業研究」という言葉。僕はずっと前から違和感を覚えていて、以前こんなツイートをしました。 就活における「企業研究」っていう言葉にずっと違和感があるんですよ。だって「研究」って、既存の文献を元に新たな仮説を立て、それを実証していくっていうPDCAサイクルそのものなんですよ。でも企業研究ってただの〈調査〉じゃん。新しいもの生み出してないじゃん。だから違和感しかないのよ。— みけめろ@starnote* (@info_starnote) 2018年7月9日 このように、〈ただの調査にすぎないもの〉が研究とよばれていることがよくあります。そのような場面に遭遇するたびに、僕は心の中で「いや、それは研究じゃないよ?」と突っ込んでいます。 では、「研究」の正しい意味とは、どのようなものなのでしょうか? 研究 = 仮説の検証 研究とは、〈仮説を立て、それを証明していく過程〉のことをいいます。具体的には、以下のようなサイクルで回ることが多いです。 複数の文献 ↓ 新たな仮説 ↓ 実験(適切な実験デザイン) ↓ 証明 ↓ 発信 複数の文献から新たな仮説を立てる たとえば、 文献A:リンゴは甘い

博士課程をイメージしてみよう②|「研究」とは?


発表のわかりやすさは準備の手順で決まる!?

人それぞれですが、学会の数週間前から発表の準備を始めると思います。が、その準備の手順が本番でのわかりやすさに大きく影響するというのが、この記事でいちばん言いたいことです。

口頭発表の準備をするときは、データをまとめて、要旨を書いて、演題登録をしますよね。そのあと、どのような手順を踏んでいますか?


多くの人が行っているであろう流れ

多くの人は以下のような手順で学会発表の準備をしていると思います。僕も昔はこのような流れでした。

  • データをまとめてスライドを作る
  • スライドに合わせて話す内容を練る
  • 時間を測りつつ練習する

もしかすると、事前に行うのはスライドの準備だけで、話すことはその場で考えるという人もいるかもしれません。

もちろん、何度も経験を積んでいる人や、もともと人に対して説明するのがうまい人は、ぶっつけ本番的なプレゼンをしてもまったく支障はありません。

しかし問題なのは、プレゼンに慣れていないのに、このような流れで準備をしてしまうことです。

自分が話している言葉は、思っている以上に人に伝わらないものです。ましてや、プレゼンの専門家ではない人が、さらっとこなせるものではないのです。

だから、プレゼン方法に精通していない人は、前もって対策をしないといけない。


なぜわかりにくくなるのか?

発表がわかりにくくなってしまうのはなぜか。

それは、「スライドを作った本人」と「聴衆」では、1枚のスライドに向き合っている時間が大きく異なるからです。

図を書いたり文章を練ったりしていると、1枚のスライドを作るのに1時間以上かかってしまうこともザラではありません。そうなると、目の前のスライドだけに意識が向いてしまって、発表の中でそのスライドがどのような立ち位置なのか見えづらくなる。

そんな状況で作ったスライドを使ってプレゼンを行っても、なかなか理解してもらえないかもしれません。

なぜなら、聴衆には最初から最後までの情報が数分間で一気に入ってくるので、発表者よりも俯瞰的な視点になるからです。1枚のスライドに向き合っている時間は、長くても1分以内でしょう。

つまり、発表者と聴衆との間に「発表を見る視点の違い」が生じてしまうのです。

自分は地上にとどまって木を見ているし、なんなら葉っぱの数まで把握している。それなのに、聴衆が見るのは上空から見た森。

視点がこんなに違っていたら、わかりやすいプレゼンなんてできるわけがありません。


解決策は「ストーリーを練る」こと

ではどうすればいいのでしょうか?

解決策は1つで、聴衆と同じ視点に立つことです。つまり、以下のようなステップで発表を作ります。

  • 発表全体を俯瞰してストーリーを練り、
  • 緒言から結論に向かう全体の流れを作った上で、
  • その流れに沿ったスライドを作る。

だからスライドを作るのはいちばん最後のステップなんです。

プレゼンを制作するという一連の作業は、建物を建てるのに似ています。基礎を固めた上で、その上に建物が建ちますよね。基礎がボロボロだったら、その上の建物がいくら頑丈でも倒壊してしまいます。

つまり、

  • 基礎 = ストーリー
  • 建物 = スライド

なのです。

基礎を固めるのは地味な作業なので、なかなか目が向きづらいです。でもとても重要な作業。

プレゼンのストーリーを練るのも同様です。ストーリーを練っている時点では「スライドという完成品」が全く姿を現してこないので、無意味な作業に思えてくるかもしれません。でもしっかりストーリーを練らないと、まともなスライドが建ちませんよ。

また、このようにしっかりと基礎を固めておけば、質問にもうまく答えることができるはずです。

ストーリーを練るときは、スライドに書いてある内容よりも深い部分まで把握しておかないといけないので、自分の研究の本質に向き合う必要があります。

深くまで理解していると、どのような質問が飛んできてもうまい回答が思いつくものです。あとは冷静かつ論理的に回答するだけ。


ストーリーが完成したら、スライドを作ろう

このように、先に発表全体のストーリーを練ってからスライドを作り始める、ということを心掛けてみましょう。

「ストーリーを練る」といっても、ざっくりしたものでも構いません。スライドを作り始める前に、発表全体の流れと、各スライドがどのような役割を果たすのかということだけでも決めると、とてもわかりやすくなりますよ。

あとは、スライドを作りながら、「今作っているスライドが最初に決めた流れからブレていないか」という視点でチェックしてみてください。こうするだけで、1本の軸が通ったプレゼンを作ることができると思います。

このような軸があれば、聴衆も発表内容を追うのが楽になるし、発表者側も説明しやすくなるはずです。


スライドの中身にもこだわって

せっかくストーリーを練って発表をわかりやすくするのであれば、スライド自体にもこだわってみましょう。

聴衆の理解を促すためには、一目で理解できるスライドを作らなければなりません。となると、今度は「スライドをデザインする」というスキルが必要になります。

デザインには直感な部分もあるけれど、それがすべてではありません。きちんと構築された理論もあります。この理論を学ぶことで「わかりやすいスライド」を作ることができるようになります。

そんな内容の記事を以前書いたので、こちらも参考にしてもらえると嬉しいです。

学会発表における「スライド」と「デザイン」の、切っても切れない関係。 – starnote*
研究をして成果が出た以上、「それを広く社会に知らしめる」という責任がある。 その手段として「論文」や「学会発表」が存在する。論文は文章を使って説明できるので、できるだけ詳細に書くことで読者との理解の共有を図ることができます。一方、学会発表(特に「口頭発表」)は時間制限があるために、簡潔にわかりやすく説明しなければならない。 だから、発表者は「聴衆が一目で理解できるスライド」を作るに越したことはありません。それを実行するために、スライドデザインという観点では何ができるのか、というのが今回のお話。 薬学系博士課程の大学院生です 本題に入る前に軽く自己紹介を。 僕は現在、国立大学薬学部の博士課程に在籍しています。4年間通うカリキュラムの4年生です。 在学中は、国際学会でも英語での発表を行ったりして、それなりに「学会発表」というものを経験してきたつもりです。この記事に書いている内容は、その中で試行錯誤してきた結果です。 詳しいプロフィールはこちらからどうぞ。 → 著者プロファイル スライドは補助的な役割 よく忘れがちな視点ですが、あくまでも「口頭」発表であるということを、僕はいつも心掛けています。発表の主体となるのは「自分が話す言葉」であって、スライドではない。だからスライドは補助的な役割として、口では伝えにくいものを記しておけばいい。 つまり、スライドに載せるのは「イラスト」「表」「グラフ」などが主体になります。長々と文章を書くのはNGです。スライドに書いてある文章って読むのが大変だし、聞いている方もうんざりしてきます。 重要なのは、スライドを作るときに「自分が聴衆の側としてこのスライドを見たときに、初見で理解できるかどうか」という視点を常に持っておくことです。 スライドを作るスキルも必要ですが、それよりも「相手の立場に立ったホスピタリティ」の方が大切。聴衆に配慮したスライドなら、多少スキルが劣っていても、みんな理解しようとしてくれます。 だからこそ、聴衆の目線に立ったわかりやすい発表を心掛けることが大切です。 → 学会発表の準備では、スライドの作成よりも先にストーリーを練るべし。 まずは、このような思いの下で、僕が作ったスライドを紹介します。 僕が作ってきたもの

学会発表における「スライド」と「デザイン」の、切っても切れない関係。


まとめ

ざっくりまとめると、以下の3点に収束します。

  • 口頭発表は、自分の話した「言葉そのもの」がメインである
  • メインである言葉から作る = ストーリーから練る
  • スライドは補助的な役割なので、ストーリーが完成してから作成開始

このような流れでプレゼンを作ると、きっとわかりやすくなるはずです。ぜひ試してみてください。


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