嵐の前の、長崎。

台風が近づいている。

予報によると、沖縄から東シナ海を通って日本海に抜けるらしい。このコースを辿ると長崎は台風の右側だ。だから明日はいつになく荒れた天気になるはずで、まともに外出もできないかもしれない。

それなのに、今日の夕暮れは一段と色鮮やかだった。まるで、明日の空模様の埋め合わせをしているかのような、そんな空だった。


「空がすごい!」

研究室の窓から目に飛び込んできたその空を見て、叫ばずにはいられなかった。紫と橙のグラデーション、雲が作り上げる影、山の稜線とのコントラスト、どれをとっても心が持って行かれそうになる。


そんな空に照らされて、雨で濡らされた道路が橙色に光り出す。まるで街全体にスポットライトが降ってきているかのよう。


東を向いたらすっかり夜だ。でも西の空は、まだ微かに燃えている。


街灯は白い光で道路を照らす。その後ろには、炎が消えかけた空。街を照らす役目は、このちっぽけな白い光に委ねられた。


嵐の前の静けさ——嵐の前のきれいな空——嵐の前の、長崎。

長崎の地で暮らすのは、あと9か月。この地でこんな空を見ることは、もうないかもしれない。

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