LINEがやろうとしているオンライン診療。正しい方向性だけどクリアすべき課題も山積み。

インフラとなった企業だからこそ、できることだと思うのです。


LINEがやろうとしているオンライン診療

2019年1月、LINEとエムスリーが手を組んで「LINEヘルスケア」を設立しました。その目的は「オンライン診療」を実現すること。

待ち時間なし自宅でスマホ診療、処方薬は宅配…LINE×エムスリー新会社トップが語る医療サービス改革
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これは全く正しい方向性だと思います。なぜそう思うのかということについて、この記事に記しておきましょう。


未来の日本を先取りする、現在の「へき地」

2015年7月、僕は長崎県の五島列島を構成する「奈留島」という島にいました。いわゆる「二次離島」に分類される島で、別の島を経由しなければ本土に向かえないようなところです。

このブログの一番最初の記事にしたので、雰囲気はこちらで掴めると思います。

五島列島・奈留島に行ってきた〈その1〉 – starnote*
1か月ほど前のことだが、長崎県の五島列島にある奈留島に行ってきた。仕事で行ったために観光はしていないので、雰囲気だけでもお届けしたい。〈その1〉では奈留島に辿り着くまでを紹介する。写真多め。 長崎県の五島列島 九州から西に100kmほど離れたところにある五島列島。長崎市民の間ではなじみが薄いためか大まかに「上五島」「下五島」と分類されることが多いのだが、これはかなり大ざっぱな分け方だと思う。地図を見て分かるとおり、五島列島には大小さまざまな島がある。その中でもちょうど真ん中 *1 にあるのが奈留島。人口3,000人弱ののどかな島なのだ。 船を乗り継いで行く 長崎市内からのアクセスには高速船(ジェットフォイル)とフェリーがある。フェリーなら乗り換えなくて済むが、ものすごく時間がかかるし酔いまくるらしい。*2 今回は一旦福江島まで九州商船のジェットフォイルで行き、そこから五島旅客船の高速船ありかわに乗り換えた。乗り換え待ちを除くと2時間ちょっとで着く。 奈留島に行くには福江港で乗り換える。 ちなみにジェットフォイルとはボーイング社 *3 が開発した高速船だそうだ。ジェットエンジンを搭載し、海面から2〜3メートルほど浮上して進む。 ジェットフォイル「ぺがさす」。あいにくの雨。 長崎港の大波止ターミナルから11:30発のジェットフォイルに乗船し、90分ほどで福江港に着いた。運賃は片道で5,610円だ。船内の写真は撮っていないのだが、座席は90分過ごすのに十分なゆとりがあるし、荷物置き場もあるのでキャリーバッグの持ち込みもOK。浮上して進むためか船内はほとんど揺れない。船酔いしやすい人もこれなら安心して乗れるだろう。 福江港ターミナル。雨は上がっていた。 しまとく通貨 福江港ターミナルに到着したら、まずはじめに「しまとく通貨」を購入しよう。*4 6,000円分使える商品券が5,000円で買える、いわゆるプレミアム付き商品券だ。五島列島に限らず長崎県内の他の離島(壱岐・対馬など)でも使える。 ながさき しまとく通貨www.shimatoku.com

五島列島・奈留島に行ってきた〈その1〉

僕が訪問した2015年時点で、人口2,269人のうち実に48%が65才以上の高齢者でした(→ 参考資料PDF)。

何をしていたかと言うと、島内で行われた特定健診を手伝っていました。僕の記憶が正しければ5日間くらいやってたと思いますが、患者としてやってくるのはほぼお年寄りです。

このような大規模な検診があるのは1年に1回。おそらく会場となる体育館まで時間をかけて歩いてきたのでしょう。

島内にある医療提供施設は、2013年に病院から格下げされた診療所が1か所と、民間のクリニックが1か所。医療を必要とするお年寄りの割合は高いのに、それが行き届いていない現実にひどくもどかしさを感じました。

どこに住んでいようと日本国民であることに変わりはないから、国民皆保険制度のもとに等しく医療を受ける権利があります。でも都市部とへき地で差があるのが今の日本の現実です。

このような現状を変えようとしている医療者はいます。でも、この先働く世代が減っていく中で、へき地で働く医師・看護師・薬剤師などを確保するのはさらに難しくなります。

そして、医療の担い手が減っていくのは、へき地だけの問題ではありません。このような極端な高齢化が起こっている奈留島の現状は、未来の日本に当てはめることができるからです。


急速な高齢化が進む日本

1 高齢化の現状と将来像|平成30年版高齢社会白書(全体版) – 内閣府

内閣府の推計によると、65才以上の高齢者割合が2040年には35.3%、2060年には38.1%にも達するという予測が出ています。さらに、2040年には生産年齢人口(15〜64才)が全人口の半数程度にまで落ち込みます。

だから、今の奈留島で起きていることは20年後の日本を先取りしていると言っても過言ではありません。「医療を必要とする高齢者はたくさんいるのに、それを提供する医療従事者が足りない」という事態が日本全体で起こりうるのです。


遠隔診断のある未来

厚生労働省が2019年1月〜3月に開催した「未来イノベーション ワーキング・グループ」では、2040年の日本の医療と介護について議論が交わされました。

その中で、2040年にかけて見込まれる技術の進展において、「5G〜6Gという通信速度の向上」や「AI技術の向上による個別化医療」といった未来が予測されました。

「未来イノベーションワーキング・グループ」の中間取りまとめを行いました

特に、医療デバイスの進歩により自宅にいながらデータを収集することができるようになります。日本ではまだ対応していませんが、すでにアメリカではApple Watchを使って心電図を取ることができますよね。

2040年になると、体温計、体重計、血圧計など、すべての医療デバイスがインターネットにつながるはずです。となると、自宅にいながら診断や投薬までできた方がいいに決まってます。

5G回線を使ったビデオ通話で、医師の診察や薬剤師の服薬指導を受ける。進歩したAIによって医師の診察にかかる時間はより短くなる。

このような医療が現実のものになると、都市部でもへき地でも同質の医療を受けることができます。LINEが切り込もうとしているのは、まさにこの部分。


LINEがやろうとしていることは、在宅医療の拡張

現在の日本で行われている医療として「在宅医療」というものがあります。主に自宅から出歩くことのできない高齢者向けのものですが、

  1. 医師が訪問して患者を診察し、その場で処方箋を発行
  2. 患者が処方箋を薬局にFAX送信 or 医師から薬局に情報提供
  3. 送られた処方箋をもとに薬剤師が調剤し、患者宅へ持って行く
  4. 患者宅にて処方箋の原本を確認し、服薬指導を行う

このようなスキームで行われています。

現在の枠組みの中で構築されているので、かなりアナログな部分が多いです。それは同時に、医療においてはデジタル化が遅れているということの裏返しでもあります。

この在宅医療のスキームをデジタル化したのが、LINEが行おうとしているオンライン診療です。つまり、

  1. ビデオ通話や血圧計などの情報をもとに、医師が遠隔診断
  2. オンラインで処方箋を発行
  3. 薬剤師が調剤し、患者宅へ宅配
  4. 患者が薬を受け取ると、薬剤師がビデオ通話で服薬指導

ここまでできればかなり効率化され、限られた人的リソースでも超高齢社会の医療を回すことができると思うのです。むしろここまでしないと回らないかもしれない。

このように、LINEがやろうとしていることは正しい方向性なのです。


クリアすべき課題は山積み

このような医療を実現するためには、主に法的な部分においてクリアすべき課題がたくさんあります。技術的な部分は時間が経つと自ずと解決するはずです。

現在の日本の法制度では

  • 医師の診察と薬剤師の服薬指導は対面でなければならない
  • 処方箋は基本的に紙で発行する

このようになっています。

ポイントは、医師の診察も薬剤師の服薬指導も「対面」でやらないといけないという点。これからの日本は若い世代の医師・薬剤師の人的リソースが先細ってくるので、この制度が回らなくなる日が必ず来る。

これは都市部でも地方でも(程度は違うかもしれないけども)同じことが起こります。そのためにはIT技術を使って、医師・薬剤師が移動することなく診察・服薬指導を行う必要があります。

今の技術でもできることからやるとなると、すぐにでも全ての処方箋を電子化すべきです。一応「電子処方箋」というものも制度化されていますが、広く使われているとは言えない状況です。

最近ではマイナンバーカードを保険証として使う動きが見られますが、それに処方箋も紐付けるべきです。そうすると紙の処方箋なしで薬をもらうことができます。

マイナンバーカードが保険証に=利便性高め普及促進-健保法改正案:時事ドットコム

海外の実例として、たとえばアメリカの場合。

2018年11月に病院や薬局の現状を見てきましたが、処方箋はオンライン発行でどの薬局からでも参照することができるし、薬を宅配して電話で服薬指導をしてもらえるし、とても合理的でした。ただし医師の診察は対面です。

アメリカの薬局②|コミュニティファーマシーとドラッグストア – starnote*
昨日に引き続き、アメリカの薬局特集の2回目です。今回は対照的な「コミュニティファーマシー」と「ドラッグストア」を取り上げます。 付加価値として「きめ細やかなサービス」を提供するコミュニティファーマシーと、割と流れ作業なドラッグストア。アメリカ人も好みが分かれるようです。 さらに、もうひとつの対立軸として、日本とアメリカの薬局のちがいという視点でも見てみたいと思っています。 前回は、薬局内で薬を製造する「コンパウンド・ファーマシー」を紹介しました。 いくら薬局で薬を製造することが認められているとはいえ、すべての薬局でこのようなことを行っているわけではありません。アメリカにも、日本と同じような調剤薬局やドラッグストアが存在します。 今回は、このような〈普通の〉薬局を紹介。 DURAN’S PHARMACY きめ細かなサービスに定評のあるコミュニティファーマシー「DURAN’S PHARMACY」。日本でいうところの「調剤薬局」です。 患者との対話を重視し、従業員全員が患者の顔と名前を覚えているので、その人に合ったサービスを提供することができるそうです。 たとえば、アメリカの処方せんは病院から薬局へオンラインで送られているので、患者が薬局を訪れる前から薬の準備ができます。患者の顔と名前を覚えていれば、薬局を訪れた直後に薬が出てくるし、健康状態の相談もしやすくなるし、いいことばかりです。 また、このDURAN’S PHARMACYでは、異なる医療機関から処方された薬の日数をそろえ、患者が月に1回だけ薬局を訪れればいいようにしているそうです。 このように、普段から過剰なサービスに慣らされている日本人から見ても、きめ細やかだと感じるサービスが提供されている。だからアメリカ基準だったら超親切な薬局ということになりますね。 コミュニティファーマシーにおける薬剤師 日本の調剤薬局では、通常の調剤業務に加えて、高齢者向けの「在宅医療」や「一包化」に取り組んでいる薬局も多くあります。アメリカでも、このような取り組みが行われているのでしょうか。

アメリカの薬局②|コミュニティファーマシーとドラッグストア

対面で服薬指導を行わないようになると「副作用を見つけにくくなる」というデメリットはありますが、患者の疾患名や薬歴などの情報は全米で共有されているので、何かあればすぐに対応することができます。


まとめ

これからは医療とITがどんどん融合していくので、それぞれの分野から知恵を出し合わないといけない。さらに、企業だけではなくて政府まで巻き込んで、規格を統一しないと日本の隅々にまで行き渡りません。

だからこそ、これだけインフラとなっているLINEがやるということに、大きな意味があると思います。なので引き続き状況を注視していきます。(いつか縁があればジョインしたいですね)


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