自由気ままに、余白を楽しむ。
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旅には「余白」が大切だ。
あれもこれもと予定を詰め込みすぎると、次の予定を気にしながら回らないといけないし、常に時間との勝負になる。そうならないように、大まかなスケジュールだけを決めておいて、候補に挙がっていた場所に行けなくても「仕方なかった」で済ます。
僕らはいつもこのような「余白の旅」をやっています。どこに行くときもそうで、京都に行ったときも「このあたりのエリアで何かをする」ことしか決めずに、そのときの気分やその場の流れで行く場所を決める。これが心地よくて、ずっとこのようなスタイルなのです。
だったら、もう旅全体を「余白」と捉えてもいいのでは?——と思ったのが、この旅の発端。
目的地は決めたけれど、「どう巡るか」はすべて成り行きに任せる。箱根の風と、そのときの気分に導かれるままに、ただ流れに身を任せてみる旅。車での移動時間すらも「大切な余白」の一部だから、たとえ渋滞していてもその時間を愛おしむことができる。そんな穏やかな旅を、箱根の1日に当てはめてみることにしました。
旅のはじまり
今回の箱根旅は、犬を幼稚園に預けている間の日帰り旅。10時頃に犬を預けて18時すぎに迎えに行くから、8時間ほどの「余白」がありました。この余白に何を入れ込むか?——ポーラ美術館の企画展に行きたかったから、箱根に行くことは決まっていたのだけれども、他の時間で何をするか?
妻と話し合った結果、久しぶり(写真を遡ると2年ぶりだったようです)にBOX BURGERに行ってみることにしました。テラス席なら犬も連れて入れるお店なのですが、犬連れだと美術館には立ち寄れないから、自ずと箱根自体から足が遠のいていたのでした。
車で箱根に移動
犬を幼稚園に預けて、横浜青葉ICから東名に乗ります。すると本線に合流した時点でもう渋滞していました。ここまで渋滞しているのは珍しいなと思いながら、余白楽しむ旅だからいいんです。いくら渋滞しても間違いなく進んでいるので、流れに身を任せていれば箱根は近づきます。
さて、8時間の余白をどのように埋めようか? 渋滞の中で考えます。
多めに見積もって往復するのに4時間くらい、16時には箱根を出発しなければならない。だとすると残りの4時間をどう過ごす? 箱根に到着するのは12時くらいだけど、それだとBOX BURGERがお昼時で入れないかもしれない。とはいえ15時にラストオーダーを迎えると。
ざっくりと余白の埋め方
- 10時〜12時 移動
- 12時 BOX BURGER
- 13時 ポーラ美術館(企画展を中心に鑑賞し、時間が余れば遊歩道を散策)
- 16時〜18時 移動
こうなればいいなと思いながら、渋滞を過ごしました。BOX BURGERが混んでいればポーラ美術館と逆にしてもいいのだけれども、時間を気にしてゆっくり鑑賞できないかもしれないから、できれば先にBOX BURGERに行きたい。まあ、余白が埋まればいいから、行けなくても仕方ないんですけどね。
BOX BURGER、スムーズに入店できちゃった
いつも渋滞するポイントはもちろん混んでいました、それでも全体を見ると比較的スムーズに進み、12時すぎには宮城野のBOX BURGERに到着。いつもなら駐車するのも一苦労なくらいに混んでいるのに、なぜかすんなりと止めることができてしまった。余白楽しむ旅なのに、余白が生まれそうにないですね。
久しぶりのBOX BURGER、ワクワクしながら注文します。僕は看板メニューのボックスバーガーにポテトを添えました。少しリニューアルしたようで、お皿での提供となっていました(以前はアルミのバットだった)。
こだわりの相州牛のパテが美味しいバーガーなのですが、なんか味が変わったような気がした。妻も同じ感想だったので、本当に味が変わったか、2年間行かなかった間に僕らの価値観が変わったか。美味しいのは間違いないので、また訪れようと思います。2人で5,000円にもなるから、頻繁に行くのは気が引けますが…
BOX BURGER 宮城野本店
神奈川県 南足柄産ブランド牛「相州牛(そうしゅうぎゅう)」をはじめ、上質な食材を使用したハンバーガーレストラン。
ポーラ美術館へ
そして、13時にはポーラ美術館に到着。余白楽しむ旅なのに、うまくいきすぎている…
BOX BURGERからは車で10分くらいで、この2か所はぜひともセットで訪れたいところ。もはや僕らの中では箱根といえば「ポーラ美術館」と「BOX BURGER」が思い浮かぶほど、定番の場所になっています。
駐車場に車を止めて、早速館内に向かいましょう。
ポーラ美術館の造形美
いつも思うけれど、ポーラ美術館は建物自体が美しい。
ガラスの屋根から降り注ぐ優しい光が、無機質な打ちっぱなしのコンクリートを穏やかに照らす。「心を揺さぶる美術館」というコンセプトのもと、もちろん展示物にも心が揺さぶられるけれども、美しい建物の中で美術品を鑑賞するという「美術館体験」そのものに心が躍ります。
その建物は、単純なように見えて、実は複雑に入り組んだ形をしているのです。入口から反対側にかけて直線的に絞られていくその構造は、ガラス屋根の質感も相まって、まるでプリズムのよう。さらに、立体として見ると、最上段の入口から最下層にかけて、4段重ねの大がかりな吹き抜け構造となっています。
企画展「カラーズ ― 色の秘密にせまる」
ポーラ美術館は昨年11月にも訪れているから、まだ3か月程度しか期間が空いていません。今回は新しい企画展が始まったということで訪れてみました。ちょっとネタバレになってしまうかもしれないので、これから行こうとしている方は読み飛ばしてください。
展示されている作品のいくつかは、これまでに何度も見てきたものです。しかし、見せ方の「切り口」によってこんなにも見え方が異なるのかと、改めて思った次第。ポーラ美術館といえば、以前行われた企画展「ピカソ 青の時代を超えて」がいちばん印象に残っているのだけれど、今回の「カラーズ ― 色の秘密にせまる 印象派から現代アートへ」はそれに次ぐインパクトがあったかもしれない。
惜しむらくは、企画展の図録がまだできていなかったことでしょうか。今回はぜひ欲しいと思っていたのですが、会期は5月中旬までと長いので、もう一度訪れたときに買ってもいいかもしれません。おそらくオンラインでも買えるようになると思うけれども、箱根くらいいつでも行けるからね。
遊歩道を散策
さて、展示を見終わりましたが、もう少し時間が残っていました。せっかくの休日なので、横浜に向かって走り始める前にポーラ美術館の「森の遊歩道」を散歩して、最後の余白を埋めていきます。
こに遊歩道は、美術館の建物の周囲とその奥にある森に渡って繋がっており、ゆっくり歩いて40分ほどの長さになるようです。僕らは写真を撮りながらチンタラ歩くのでもっと時間がかかるし、そもそも全部歩いたことがないので、真偽のほどは分かりません。

ここまでは建物をぐるっと半周回ってきましたが、ここからは森の中に入っていきます。
歩きやすく整備されており、ところどころ彫刻が置かれていたりして、気軽に自然やアートに触れることのできる楽しい遊歩道なのです。前回訪れたときに初めて歩いてみたのですが、あまりに楽しかったので、今回も歩かないという選択肢はありませんでした。
今回は前回よりも少し長いコースを歩いてみたけれど、次はもっと長く歩いてみたいですね。遊歩道に回す余白を多めに残しておくことにしよう。
車で旅すると、余白が生まれる
こうして、箱根の1日が終わりました。結局、予定していた通りに物事が進みすぎて、旅の余白があまり生まれなかったような気もします。しかし、「余白を残しておいたからこそ、無理なくスムーズに動けた」とも言えるかなと。
もし事前に細かい予定を詰め込んでいたら、渋滞に焦り、BOX BURGERの待ち時間に苛立ち、美術館では時計ばかり気にしてしまっていたかもしれない。なにより、ポーラ美術館で「遊歩道を歩こう」と思えたのは、余白があったからに他なりません。
そして、このように自由な旅ができるのは、自分の車で移動しているというのも大きい。今回は犬のお迎えの時間は気にする必要があったけれども、それ以外は本当に自由です。帰りの電車の時間も、駅に向かうバスの時間も、レンタカーを返却する時間も、何も気にする必要がないのです。これこそが「余白の旅」の魅力。
また、移動時間をただの「目的地までの時間」ではなく、「旅の流れの一部」として捉えることで、時間そのものを楽しむ余裕まで生まれる。これは、車で旅をするからこそ感じられる「余白」の醍醐味なのかもしれません。
旅の「余白」を作るコツ
今回の旅で改めて思ったのは、「余白の旅」にするには、ちょっとした工夫が必要だということ。余白は、ただ時間を空ければいいというものではなく、「どう過ごしてもいい時間」を意識的に作ることが大切です。
たとえば、こんな感じ。
- 目的地ではなく「エリア」を決める
→「12時にはこのレストラン」ではなく、「12時ごろにこのエリアでランチを探す」くらいの決め方がちょうどいい。 - 行く場所を固定しすぎない
→ たとえば「美術館を見終わったらすぐ帰る」ではなく、「時間が余ったらちょっと歩いてみる」という選択肢を持っておく。 - 移動時間も「余白」として楽しむ
→ 渋滞も「足止め」ではなく「考え事をする時間」。車旅ならではの自由を活かして、気になった場所でふらっと止まってみるのもいい。
このように、あらかじめ「旅の余白を作る」ことを前提にしておくと、旅の流れに身を任せやすくなるでしょう。
次の旅では、もっと余白を増やしてみる
今回の旅は、「余白を楽しむ」をテーマにしていたのに、予定通りにうまくいきすぎた部分もありました。だから次は、もっと「余白=決めない」部分を増やしてみてもいいかもしれないなと思っています。
たとえば、目的地すら決めずに、「とりあえず箱根方面に向かう」とだけ決めて、行きたい場所が見つかるまでドライブしてみるのも面白そう。あるいは、宿を予約せずにふらっと泊まる場所を探してみるのもいいかもしれない。ただ、そこまで自由気ままな旅に家族を巻き込むのも申し訳ないので、もしやるのならひとり旅かな。
旅はスケジュール通りに進んでも楽しいけれども、思わぬ出来事が起こることで、もっと印象深くなります。そういうときに撮った写真が、思い出深い1枚になったりするのです。次の旅では、どんな「余白」が生まれるだろう?——そんなことを考えながら、また旅に出ようと思います。