キャッシュレスの方向に社会が進んでいるというのは、どこの国だって同じです。中国でのQRコード決済の普及を見ていると、むしろ先におサイフケータイをはじめた日本の方が遅れているようにも見えます。
たびたびハードルになるのが、キャッシュレスの仕組みが国ごとに分断されていること。日本国内だけを見ても、さまざまなサービスが乱立しているような状況で、外国人にはわかりにくいだろうなーと思います。
世界共通仕様を目指すに違いないAppleでさえ、日本でApple Payをローンチする際には独自仕様として、すでにあった「Suica」「iD」「QUICPay」に相乗りする形となりました。だから海外の人がiPhoneを持ってきても、すぐに使えるとは言い難い。
では逆に、僕ら日本人が海外に行ったときも、Apple Payを使うことができないのでしょうか? 台湾で確認してきたのでレポートします。
おサイフケータイとApple Pay
本題に入る前に、少し前置きさせてください。
日本でおサイフケータイのサービスが始まったのが2004年。Suicaのスタートは、それより前の2001年。いずれもソニーが開発した「FeliCa」という近距離無線通信技術を使っています。
FeliCaは処理速度が速いので、ものすごい数を捌かなければならない日本の改札には不可欠な存在です。おサイフケータイもサービスインから十数年が経ち、「Edy」「iD」「Waon」「QUICPay」「nanaco」などとして、さまざまなお店で使えるようになりました。
一方、海外にもSuicaのような「ピッ!」とタッチするカードがありますが、そのほとんどは「NFC」という方式。「NFC Type-A」「NFC Type-B」の2種類があります。日本でも一部のカードに使われていますが、やはりメインはFeliCaでしょう。
このように長らくガラパゴスな状態が続いていましたが、FeliCaが「NFC Type-F」として国際標準規格に認められたのが、2016年のこと。iPhone 7登場の直前でした。
このあたりの詳しい経緯は、当時のマイナビニュースに掲載されています。
→ iPhoneでモバイルSuicaが使えるようになる? – NFC対応スマートフォンにFeliCa搭載という流れ
このように、日本ではApple Payが始まる前からFeliCaを使った「非接触型決済」の下地ができていました。
そこに相乗りする形で(「Suica」「iD」「QUICPay」の仕組みを使って)、2016年のiPhone 7からApple Payが始まりました。この部分が完全に日本独自仕様です。
Apple Payにクレジットカードを登録すると、対応するサービスが右下に出てきますよね。たとえば、三井住友カード発行のANA VISAカードにはiDが紐付けられます。
楽天カードはQUICPayです。
でもちょっと待って。もう一度よく見てみましょう。
左のANAカードにはiDのマークしかない(VISAはない)のに、右の楽天カードにはQUICPayとJCBの両方が表示されています。
カードの詳細を見てみると、その謎が解けます。
元のクレジットカードと別のデバイスアカウント番号が割り振られるのは、Apple Payの仕様です。でもその番号が、ANAカードには1つ(iDのみ)、楽天カードには2つ(JCBとQUICPay)、割り振られています。
これが、今回の話のミソです。
iDやQUICPayは、国際ブランド(VISAやJCB)とは関係なく、カードの発行会社(三井住友カードや楽天カード)に基づいて紐付けられます。この部分が日本のApple Payの独自仕様です。
一方、海外のApple Payは国際ブランドがそのまま登録されます。(実際に登録したわけではないので間違っていたらごめんなさい)
で、あまり大きく宣伝されていませんが、おそらくiOS 11から、「日本独自仕様のApple Pay」と「国際共通仕様のApple Pay」が共存できるようになりました。
つまり、「FeliCa」を使うApple Payと、「NFC Type-A/B」を使うApple Payの2種類が、1枚のカードとして登録されている状況。だからQUICPayとJCBの両方のロゴが表示されているのです。
非接触型決済サービスとApple Pay
少し話は変わって。
NFC Type-A/Bを利用する決済サービスとして、JCBは「JCB Contactless」を提供しています。以前は「JCB J/Speedy」ともよばれていました。
他の国際ブランドも同様に、「VISA payWave」「Mastercard Contactless」「American Express Contactless」というものを提供中です。これらのサービスは、クレジットカードをそのまま「ピッ!」とかざして使うタイプのもの。
このうち、VISA以外の「JCB Contactless」「Mastercard Contactless」「American Express Contactless」はApple Payでも使えます。
要するに、上の楽天カードにJCBが表示されていたのは、「JCB ContactlessがApple Payで使えますよ」という印です。他のブランドも同様に、iDやQUICPayと並んで表示されています。
JCB Contactlessの場合、JCBブランドのカードだったら発行会社に関係なく使えるみたいです。僕の手持ちのJCBは2枚ですが、どちらも表示されていますね。
左は楽天カード、右はアプラス発行のTカードプラスですが、どちらもJCB Contactlessとして使うことができます。(実際に使ったのは右だけですが、理論上はできるはず)
台湾で使えました
日本国内はFeliCaを使ったサービスが便利すぎるので、積極的にContactlessを使うことはありません。
しかし、海外なら話は別です。つまり、「国際共通仕様のApple Pay」が主戦場となる場所。
昨日行った台湾では、このようなマークのついた決済端末を見かけました。(日本でもローソンやマクドナルドなどにありますね!)
これは「リップルマーク」というもので、NFC Type-A/BのContactless決済に対応してますよ、ということを示すものです。このマークがあったらApple Payにも対応している可能性が高いはず。
散歩している途中で寄ったスタバにも、この決済端末らしきものがありました。じろじろ観察するよりも聞いた方が早いかなーと思い、
Can I use Apple Pay?
と尋ねてみると、
Yeah!
と妙にハイテンションな返事。
あとは日本にいるときと同じで、使用するカードを選択し、サイドボタンをダブルクリックしてFace IDで認証するだけ。とってもかんたん。今回はTカードプラスで支払いました。
アイスコーヒーも美味しかったです。
台湾のスタバでApple Pay (JCB Contactless) が使えました! pic.twitter.com/lftIJ6Zehj
— みけめろ@starnote* (@info_starnote) 2018年10月27日
スタバの他にも、
- 台北101の展望台チケット(の自動販売機)
- セブンイレブン
- Woolloomoolooというカフェ
で決済端末があることを確認しました。さすがに夜市では使えませんが、意外と普及しているんだなーという印象です。実際に使ったのはスタバと台北101だけですが…!
最後に
日本で発行されたクレジットカードで登録したApple Payがそのまま使えると、海外旅行がぐっと身近になりますよね。
財布を取り出さなくていいから便利だし、慣れない現地の通貨を探す手間も省ける。空港で現地の通貨への両替も減らすことができる。まるでデメリットが見当たらない。
だからもっともっと、いろんな国で普及してくれたらいいなーと思ってます。今週末からはアメリカに行くので、Appleのお膝元ではどのくらい使えるのか、この目で確かめてきたいと思っています。