柔らかさと深みの好循環の中で。
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さらなる深みを求めて潜ることができるレンズ
つい先週、8月6日に「Tokina atx-m 56mm F1.4 X」が発売されました。TokinaのFUJIFILM Xマウント用の単焦点レンズ第3弾で、35mm換算で84mm相当の画角。つまり中望遠レンズです。
ありがたいことに、ケンコー・トキナー様より発売前のこのレンズを1か月程度お借りする機会をいただきました。いろんな場所に持っていったので、作例とともに感想をお届けします。
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メーカーより商品を無償で提供いただき、記事を執筆しています。記事の内容は全く指示を受けていないので、僕が使ってみた率直な感想を記載しています。
もくじ
Tokina atx-m 56mm F1.4 X
先日レビューした「Tokina atx-m 33mm F1.4 X」と同じシリーズです。外観もサイズも同じなので、言わないと同じレンズだと思ってしまいそうです。
→ Tokina atx-m 33mm F1.4 X|日常生活を印象的に撮影するレンズ
詳細はメーカーの公式ページを参照してもらえればと思いますが、ざっくりとした仕様は以下のとおりです。
焦点距離 | 56mm |
---|---|
明るさ | F1.4 |
フォーマット | APS-C |
最小絞り | F16 |
レンズ構成 | 9群10枚 |
コーティング | マルチコーティング |
画角 | 28° |
フォーカス方式 | インナーフォーカス |
フィルターサイズ | 52mm |
最短撮影距離 | 0.6m |
マクロ最大倍率 | 1:10 |
絞り羽根枚数 | 9枚 |
最大径 | 65mm |
全長 | 72mm |
質量 | 315g |
対応マウント | 富士フイルムX |
大きな前玉
フィルター径はこれまでのシリーズと同じく52mmですが、中望遠レンズらしく前玉は大きいです。このまま持ち歩くのは怖いので、レンズフィルターを装着してしっかりガードしたいところ。
X-T4に装着してみる
X-T4に装着してみましょう。カメラ本体とレンズのバランスもちょうどいいと思いました。
レンズフードは金属製、反射防止加工も
これまでのシリーズと外観は同じですが、レンズフードは異なります。23mmと33mmは花形フードでしたが、56mmは円筒型フードになりました。といっても相変わらず高品質な金属製で、内側には反射防止加工も施されています。
レンズキャップはプラスチック製
ただし、これまでのシリーズと同じくレンズキャップはプラスチック製です。といってもソニーのようにちゃちなものではなく、しっかりとしたものが付属しています。
絞りリングを搭載
FUJIFILM純正のFUJINONレンズと同様に、レンズの本体寄りには絞りリングが搭載されています。これもこれまでのシリーズと同様にクリック感のない無段階式です。リングは重く、回すときには結構な力が必要です。
33mmのレビュー時も書きましたが、個人的には適度なクリック感があって軽く回すことができるFUJIFILM純正レンズの方が好みです。
絞りリングは、いちばん右側がF1.4で、左側にF16、その先にF値オート(A)があります。なお、回す際はF16とAの部分に少しクリック感があります。
これまでのFUJIFILM Xマウント向けTokinaレンズと比較
これまで、TokinaレンズとしてFUJIFILM Xマウント向けに3本の単焦点レンズが発表されてきました。広角な「23mm」、標準的な「33mm」、中望遠の「56mm」です。いずれもAPS-C用のレンズなので、35mmフルサイズに換算するとそれぞれ「34.5mm」「49.5mm」「84mm」となります。
3本並べてみましたが、3本とも同じようなサイズや外観を呈しています。スペック的にも「全長72mm、最大径65mm」と全く同じサイズです。そのため、見分けるためには本体に印字されている文字を確認するしかありません。複数台持っている人は持ち出すときに間違えないようにしないといけませんね。
フィルターサイズはいずれも52mmですが、レンズの大きさは結構違います。特に今回発売された56mmは大きな前玉を搭載しています。
本体は同じようなデザインではあるものの、レンズフードを付けると結構異なります。23mmと33mmは花形フードですが大きさが違うし、56mmは円筒型フードとなっています。いずれも金属製で内側には反射防止加工も施されており、高級感があります。
作例をご紹介
製品の紹介はこれくらいにして、実際にこの「Tokina atx-m 56mm F1.4 X」でどのような写真が撮れるのか紹介します。拙い作例で恐縮ですが、参考にしてもらえれば嬉しいです。以下の6つのシーンに分けてお届けします。
- シーン1:室内
- シーン2:霧の中、精進湖の夜明け
- シーン3:身延山久遠寺に立ち寄る
- シーン4:夏の日の羽田空港
- シーン5:夕焼け散歩
- シーン6:雲の中のSORA terrace
なお、撮影機材はFUJIFILM X-T4またはX-T200で、全てJPEG撮って出しです。フィルムシミュレーションは全てクラシッククローム。
シーン1:室内
F1.4のレンズだから、対象物にピントを合わせてそれ以外の部分をぼかすと、対象物を切り取ることができます。中望遠レンズを狭い部屋の中で使うことはあまりないかもしれませんが、ブロガーなど「ブツ撮り」をする人にはいいと思いました。
〈使用機材〉
カメラ:FUJIFILM X-T4
レンズ:Tokina atx-m 56mm F1.4 X
フィルムシミュレーション:クラシッククローム
シーン2:霧の中、精進湖の夜明け
夜明けを見るために精進湖に行ってみたら、深い霧に覆われていました。日が昇るにつれて少しずつ霧が晴れ、周りの風景が露わになっていく過程を撮りました。暗い部分の描写とボケ感の柔らかさが相まって、なんとも深みのある写真になりました。
〈使用機材〉
カメラ:FUJIFILM X-T4
レンズ:Tokina atx-m 56mm F1.4 X
フィルムシミュレーション:クラシッククローム
シーン3:身延山久遠寺に立ち寄る
精進湖で朝を迎えてそのまま帰るのももったいないので、身延山久遠寺に寄ってみました。入口の門はとても大きく、全景を写すには広角レンズが欲しくなるシチュエーションでしたが、中望遠レンズでしか切り取ることのできない風景もあるはず。
〈使用機材〉
カメラ:FUJIFILM X-T4
レンズ:Tokina atx-m 56mm F1.4 X
フィルムシミュレーション:クラシッククローム
シーン4:夏の日の羽田空港
空があまりに夏だったので開けた場所に行きたいと思い、羽田空港の展望デッキに行きました。飛行機に乗る予定はありませんが、こうやって写真を撮るだけでも楽しくなってきます。展望デッキから飛行機までは距離があるので、広角レンズよりも中望遠レンズの方がうまい具合に切り取ることができたと思います。
〈使用機材〉
カメラ:FUJIFILM X-T4
レンズ:Tokina atx-m 56mm F1.4 X
フィルムシミュレーション:クラシッククローム
シーン5:夕焼け散歩
夕焼けがきれいだったので、車を降りて散歩しました。このレンズは、目の前に広がる美しい景色をそのままに切り取ることができる実力があるが故に、撮影者の審美眼が試されます。個人的にお気に入りの写真は最後のもので、花が浮き上がるような立体的で深みのある描写はさすがだと思いました。
〈使用機材〉
カメラ:FUJIFILM X-T4
レンズ:Tokina atx-m 56mm F1.4 X
フィルムシミュレーション:クラシッククローム
シーン6:雲の中のSORA terrace
長野でグランピングをしたときにも、このレンズを持っていきました。雲の中のSORA terrace、そこに舞う無数のシャボン玉、そして厚い雲の下に降り注ぐ光芒。広く写すことができないという制約があるけれど、その制約をむしろ楽しむことができるレンズです。
〈使用機材〉
カメラ:FUJIFILM X-T4、X-T200
レンズ:Tokina atx-m 56mm F1.4 X
フィルムシミュレーション:クラシッククローム
ボケ感が柔らかさを生み、柔らかさが深みを生む
使っていて思ったのは、F1.4のボケ感が柔らかさを生むんだけど、それだけで留まらないということ。ボケ感が柔らかさを生み、その柔らかさが深みを生む。このような好循環の中に自分を引き込むことで、その場の空気を切り取ったかのような立体的な写真が生まれるのです。
だから、Tokina atx-m 56mm F1.4 Xは「さらなる深みを求めて潜る」ことができるレンズ。自分の審美眼を信じて被写体を探し、その被写体と向き合い、どうすれば立体感や空気感を表現することができるか——このような思考の中に潜ることが許され、その結果が伴う頼もしいレンズなのです。
最短撮影距離が惜しい
惜しむらくは、最短撮影距離が0.6mと長いことです。こうして被写体と向き合っていると、もう少し近づきたいと思う場面が多々ありました。もっと寄ることができれば、さらに深みのある写真を撮ることができるのに。
23mmと56mmの画角を比較
最後に、23mmと56mmの画角がどれくらい違うのか、ほぼ同じ場面で比較してみます。少し色味が違って恐縮ですが、羽田空港のボーディングブリッジに到着するANA機を写したものです。
- 23mm —— FUJIFILM X-T200 + FUJINON 23mmF2 R WR
- 56mm —— FUJIFILM X-T4 + Tokina atx-m 56mm F1.4 X
こうして比較してみると、改めて56mmは遠くの対象物を大きく写したいときに向いていることが分かります。広角レンズで全体を広く写すのも魅力的ですが、余計なものを入れたくないときは中望遠レンズを持っていく方がよさそうです。
23mm 56mm
まとめ
単焦点の中望遠レンズは初めて使ったので、最初はその画角の狭さに戸惑っていました。しかし、経験を重ねるにつれて扱い方が分かってきて、「こういう場面をこのレンズで撮ったらよさそう」という勘が養われてきます。
だから、中望遠レンズ未経験の人でも躊躇することなく踏み込んでみていいと思います。そうすれば、きっとこれまで見えていなかった「別の世界」が、目の前に広がることでしょう。そのときに、この「Tokina atx-m 56mm F1.4 X」が心強い相棒になることは間違いなく、おすすめできる1本です。