マジックアワーという名のクライマックスへ。
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1月初旬の休日、雪を求めて奥日光を訪れました。この時期になると、顔に刺さるように冷たく、澄んだ空気を吸いたくて、奥日光を訪れたくなるのです。そして、中禅寺湖の畔から夕暮れを見て1日を終える、最高の休日。
前編では、東北道で日光に向かい、霧降高原にある大笹牧場に寄り道するところまでを書きました。この後編ではそれより後、楽しみにしていた景色を目に(もちろんカメラにも)焼き付けに行くところをお届けします。
前回の記事
▶ CX-60で行く、雪の奥日光ロードトリップ〈前編〉
奥日光のいちばん奥へ
大笹牧場から日光の街中へ下りてきて、いろは坂方面へと進みました。紅葉の時期は多くの車で渋滞していたとは思えないほど、閑散とした道を上っていく。標高が上がるにつれて道端には雪が積もっている、まるで蛇のようにぐねぐねと曲がった道を。寒い場所に来たのだと、改めて実感します。
明智平のロープウェイは営業時間を終えており、寄らずにそのまま進みました。いつか泊まりたいリッツカールトンを横目に、車は中禅寺湖の畔を進み、奥日光のさらに奥へ奥へ。竜頭の滝を越え、さらに標高を上げます。
戦場ヶ原まで辿り着いて、いつもなら三本松園地の駐車場に車を入れるのだけれども、今回はもっと奥まで行ってみることにしました。この先、金精道路は冬季閉鎖中だから、奥日光湯元温泉で行き止まり。そこまで行ってみます。
湯ノ湖の畔からは温泉が湧き出していて、だから湯ノ湖というのかと思いつつ、駐車場で引き返すことにしました。湯ノ湖の周りも散策したかったけれど、中禅寺湖で夕暮れを見るためには時間が足りないのです。もっと早く出るべきだった。
戦場ヶ原を散策する
車は来た道を引き返して、さっき通り過ぎた三本松園地の駐車場に入ります。道を渡ってすぐ先には戦場ヶ原展望台があり、そこに行くためです。
駐車場はほとんど凍っていて、ところどころ辛うじてアスファルトが露出しているような状況。車を降りて歩いてみると、ちょっと気を抜けば滑って転んでしまいそう。一部スケートリンクのように滑りやすい場所があって、でもそれは実際に歩いてみないと分からないから、慎重に進みます。こんなところにスニーカーで来たのが間違いだったかもしれない。何も考えてなかった。
道を渡ると戦場ヶ原展望台です。
展望台まで続く遊歩道にもしっかり雪が積もっており、階段は雪で埋め尽くされて坂になっていました。こんなところで転んで怪我でもしたら洒落にならん。滑らないように、手すりにつかまって慎重に上りました。
展望台からは戦場ヶ原の雄大な自然を眺めることができます。湿原の上にも雪が積もっており、木々は葉を落として冬の見た目になっています。この戦場ヶ原は、約2万年前の火山活動で湯ノ湖が生まれた後、地形の変化によって湿原が広がる地形になったそうです。
景色はきれいなのですが、気温は氷点下であり、遮るものが何もない展望台では冷たい風が吹き荒れていました。散策するにはあまりにも過酷な環境だったため、最低限の写真だけを撮って、車に戻ります。
戦場ヶ原展望台
戦場ヶ原を一望できる展望台。ただ、一望できるだけなので、湿原の雰囲気を味わうためには遊歩道を散策した方がいいように思います。
夕暮れの中禅寺湖へ
いつも夕暮れを見るのは、この歌ヶ浜駐車場。10分ほど車を走らせて辿り着きました。昨年の冬に来たときは無料だったのですが、車中泊対策で有料化されてしまい、今は500円かかります(15分以内の退場は無料とのこと)。
だんだん日が傾いた時間帯。自分の影もかなり長くなってきて、ゴージャスな光が降り注ぎます。写真を撮る身としては、この時間帯の光は最高です。ここから夕暮れ直後のマジックアワーまでの約1時間がゴールデンタイム。
さすがにここまで雪が積もっている季節だと、わざわざ冷たい風が吹く中禅寺湖まで訪れる人は少ないようです。おそらく雪山の登山に行っていた家族連れ、自転車に乗って訪れた人、そして僕らしかいませんでした。
僕は写真を撮りたいので車から降りてうろうろしていましたが、妻と犬は基本的に車の中から鑑賞。僕もずっと外にいるのはさすがに寒すぎるので、たびたび車に避難して寒さをしのぎます。
泥だらけの車
ここまでかなりの雪道を走ってきたから、巻き上げられた雪で車体は泥だらけです。帰ったら洗車確定だなと思っていたら、翌日に雨が降って全部流れ落ちていきました。ありがとうキーパーコーティング。
周辺をうろうろ
この駐車場の周辺には、貸しボートのお店や遊覧船乗り場がありますが、この時期はどちらもやっていません。湖畔に上げられたボートには多くの雪が覆い被さっていて、静かに春の訪れを待っているようでした。
そして、夕日に照らされる冬の男体山が美しい。標高2,486メートルの火山で、古くから山岳信仰の対象とされてきました。この美しさを見ると、そのような歴史にも頷ける。気がする。
車の中から夕焼けを待つ
駐車場の中は雪が積もっていて、シャーベット状の部分はそのまま凍結しています。油断すると滑って転んでしまうので(何回か危ない場面があった)、慎重に歩きます。ずっと外にいるのは寒いので車の中で風をしのぎますが、エンジンは止めていて暖房はオフなんだけど、風を防ぐことができるだけで全然違いますね。
正面奥に見えるのは日光白根山。夕日に照らされて、美しいアーベントロートとなることを期待しつつ、待ちます。雲ひとつない快晴だから、完全に日が暮れてマジックアワーとなるまで、ここにいたいと思いました。
美しいアーベントロートとCX-60
正面の日光白根山は、アーベントロートが美しくなってきました。1日のうちに数分間しか現れない特別な時間です。そのうえ、こんなに雲ひとつない快晴の下という条件だと、1年のうちでも数回しかないんじゃないかな。貴重なものを見られた気がする。
その美しい夕日はCX-60にも当たり、ボディ側面に周囲の景色が映り込みます。CX-60はボディ造形も流麗だし、塗装の質も高いから、このような美しい景色に囲まれるとより一層引き立ちます。映り込む景色すら車の価値を上げてくれますね。
そして、クライマックスへ
周囲はだんだん暗くなってきて、日没の時間を迎えました。西に沈む夕日を前にして、そのあまりの美しさに引き込まれていきます。湖上では鳥たちが泳ぎ、オレンジ色に反射する湖にアクセントを加えてくれます。
ふと反対側を見ると、月が出ていました。小さくしか撮れないと分かっていながらも、美しいと感じたものは全部撮っておこう。かろうじて形が分かる程度にしか撮れなかったけど。
そして、間もなくマジックアワーという名のクライマックスが始まります。真っ暗になってしまう前の、最後の数分間。中禅寺湖との共演で、今日の空はどんな美しさを魅せてくれるのでしょうか。
最後の数分間
こんなに美しいマジックアワーと中禅寺湖の共演を見ることができるのは、最初で最後かもしれない。もちろんこれまでも見たことがなかったし、おそらくこれからも。快晴のタイミングを狙ってここまで訪れるのも難しいから。
日没したから気温は下がるばかりで、ずっと外にいるのは凍えるほど寒い。こんな機会は二度と訪れないだろうから、かじかんで感覚がなくなってきた手のひらをカイロで温めながら、できるだけ多くの風景をカメラに収めたい。無心でシャッターを切りました。
今にして振り返ってみても、多少無理をして撮っておいてよかったと思います。それくらい、心に響くシーンをたくさん残すことができました。
中禅寺湖 歌ヶ浜第一駐車場
中禅寺湖を一望できる駐車場。周囲にはレストランやホテルもあり、この景色を見ながらのんびりすることもできます。
今年も、美しい中禅寺湖を見ることができた
完全に日が暮れたので、これで終わりにして帰ることにします。暗闇の中、かなり気を使って運転しないと。
とはいえ、大笹牧場でソフトクリームを食べただけなので、既にお腹はペコペコです。氷点下のいろは坂を慎重に下り、麓にあるコンビニに寄って補給します。その後は日光道に乗り、東北道と首都高を経由して帰りました。夜の高速は流れが速いのか、あっという間に家に着いたような気がします。
さて、冬の奥日光はやっぱり魅力的でした。誰もいない空間、見渡す限り雪に覆われた景色、澄んだ空気、凍てつくほどの風、そして美しい山々と湖。どれを取っても最高で、だからこそ何度でも訪れたくなるのです。
最近は冬ばかり来ている気がするから、暖かくなってからもう一度訪れたいですね。そのときは、大笹牧場のソーセージを補充して、今回行けなかった竜頭の滝の湯葉そばも食べないと。そんな楽しみを心に秘めつつ、奥日光・冬の旅を終えました。