「Zolo Libertyのおかげで、AirPodsの完成度の高さを知る」か。
スマホ関連のアクセサリで有名なAnkerが、2017年に鳴り物入りで始めた「Zolo」というオーディオブランドがあります。その第1弾として発売されたのが「Zolo Liberty」というイヤホン。
いわゆる「完全ワイヤレス」とよばれているジャンルで、ケーブルがなく左右が分離されているタイプです。なんとなく気になって購入してみたので、今日はZolo Libertyのファーストインプレッションを中心に、AirPodsと比べてみた感想などをお届けできればと思っています。
ちなみにこのZolo Liberty、自腹で買いました。提供してもらったわけじゃないので、バイアスは一切かかってません。言いたいことは正直に言いますよ!
※ 書いているうちにだんだん熱が入ってきてしまったことは、最初にお伝えしておきますね。笑
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もくじ
僕のワイヤレスイヤホン・ヘッドホン歴
よくわからない人は読み飛ばしてくださいね。
→ 読み飛ばす
音質に関する話って言葉だけではなかなか伝わりにくいし、そのせいで説得力が薄くなってしまう部分があると思うんです。なので最初に、こんな人が意見してますってことで、参考にしてもらえるかなーと思って書いてます。
僕がイヤホンをワイヤレスにし出したのは、2013年末のことです。ちょうどiPhone 5sの頃ですね。当時はソニーのバランスド・アーマチュア(BA)ドライバを搭載した、比較的高級な有線イヤホン「XBA-40」をメインで使っていました。
それに対して、Bluetoothレシーバー「MDR-NWBT20N」を組み合わせて無理矢理ワイヤレスイヤホンとして使っていたんですね。
→ 手持ちのイヤホンをワイヤレス化するBluetoothレシーバーの選び方を教えます。
ちなみにこの組み合わせは今でも(この記事を書きながら)使っています。BAドライバなので、聴いててニヤニヤしてしまうほどの音の粒の細かさですよ。本当に幸せです。
こんな調子で使っていると、ヘッドホンもワイヤレスにしないと気が済まなくなってきます。スタイリッシュなワイヤレスヘッドホンが欲しくて、「Beats Solo2 Wireless」を購入したのが2015年の秋。
→ Beats Solo2 Wirelessのイヤーパッドがボロボロに。自力で交換した手順を記録しておこうと思う。
こんな感じで、イヤホンもヘッドホンもワイヤレスな環境で使ってました。当時から「もう有線には戻れない」ってずっと言ってます。
で、2016年9月に発表されたiPhone 7シリーズからイヤホンジャックが廃止されて、本格的にBluetoothイヤホンが普及し出します。AppleからはAirPodsやBeatsXなどが発売され、迷いに迷った挙げ句、どちらも購入しました。
→ AirPodsとBeatsXってどっちがいいの? → どっちも買ったけど、よく使ってるのはAirPods。
最近では、2017年10月にはSHUREのイヤホンをリケーブルしてBluetoothに対応させるキットが発売され、有線で使っていたSE215 Special Editionをワイヤレス化しました。
→ SHUREのイヤホンをワイヤレス化できるキット「RMCE-BT1」を購入。SE215 Special Editionをリケーブルして約1か月使ってみた感想など。
以上をまとめると、僕が現在持っているワイヤレスなイヤホン・ヘッドホンは、
- Sony XBA-40 + MDR-NWBT20N
- Beats Solo2 Wireless
- AirPods
- BeatsX
- SHURE SE215 Special Edition Wireless
これら5機種です。
また、Zolo Libertyと同じジャンルである「完全ワイヤレス」なイヤホンはAirPodsだけなので、この記事では主に Zolo Liberty vs AirPods という構図になります。
はい!前置き終わり!
完全ワイヤレス界に殴り込みをかけるZolo Liberty
ここからが本題。
今回購入したZolo Liberty、完全ワイヤレスイヤホンの定番であるAirPodsの半額以下という驚異的な価格で販売されています。にもかかわらず、各方面で絶賛されていることが多い。
スペックとしては、イヤホン本体だけで最大3.5時間の再生が可能で、ケースで充電しながらだと24時間持ちます。ちなみにAirPodsは、本体で5時間、ケースで充電しながら24時間です。ほぼ互角ですね。
また、Bluetoorhの伝送コーデックは「SBC」および「AAC」となっています。iPhoneはAACに対応しているので、比較的高音質な伝送が可能です。
ポケットに入れるのを躊躇われる大きさのケース
まずはケースから。正直に言ってでかいよ!!
AirPodsのケースの3〜4倍くらいの体積があります。常にポケットに入れておこうとは思えないサイズ感ですね…
もちろん、カナル型なのでイヤーピースの分も収納しなければならなくてケースの体積が大きくなったり、消費電力が大きくてバッテリーも大きくせざるを得ないといった事情があったり…というのは理解しています。でもそれを踏まえても大きいと思うんです。
先駆者ではないとしても、この「完全ワイヤレス」というジャンルを切り開いてきたのは、他でもないAirPodsです。
それから遅れること約1年あまり。なぜ先行者であるAirPodsをベンチマークにしないのでしょうか? 百歩譲ってケースが大きくなるのは目を瞑るとしても、それに対する合理的で納得のいく説明はするべきだと思います。
まぁ確かに、Zolo Libertyに限らず、他の「カナル型完全ワイヤレス」のイヤホンも総じてケースが大きい傾向にあります。こんな状況から顧みても、AppleがBeatsXを完全ワイヤレスにしなかった理由が分かった気がしますね。
装着の安定感はGOOD
とはいえ、装着感は大変よろしいです。イヤーピースの大きさが3種類、「GripFitジャケット」とよばれる滑り止めアタッチメントも3種類あります。また、アタッチメントはつけないという選択もできるので、実質4種類。つまり イヤーピース3種類 × アタッチメント4種類 = 12通り の耳のサイズに対応しています。
これだけあれば自分の耳の形に合ったパターンを作ることができると思います。ちなみに僕は「イヤーピースL × アタッチメントS」という組み合わせで使っています。
安定感はバツグンです。歩いても走っても飛び跳ねてもズレる気配が全くありません。耳の中に埋め込まれて一体化された黒い物体、という感じです。
AirPodsも落ちないと言いながら、間違えて手が当たったときなどは落ちてしまいます。それに対してZolo Libertyは、少しくらい手が当たってもビクともしません。安定感はすばらしいです。
音質はどう?
気になる音質の話。
とりわけ音質において、耳の穴を完全に塞ぐカナル型と、乗せるだけのインナーイヤー型を比較するのはナンセンスです。音楽に集中したいときに使うカナル型と、BGM的に聴きたいときに使うインナーイヤー型。そもそもの目的が違います。
それを承知の上で言うならば、音質は「Zolo Liberty > AirPods」です。なので音質だけを重視する人はAirPodsではなくてZolo Libertyを買いましょう。なぜ「だけ」なのかは後述します。
だけど、純粋に「カナル型イヤホン」というジャンルの中でZolo Libertyを評価すると、あまり良くない部類に入ると感じます。
これは完全に僕の主観ですが、「完全ではない」ワイヤレスなカナル型イヤホンまで含めると、僕が持っている中での順位はこんな感じ。
SHURE SE215 Special Edition Wireless > BeatsX >>>> Zolo Liberty
高級有線イヤホンの無線化まで含めるとこうなります。
Sony XBA-40 + MDR-NWBT20N >>>> SHURE SE215 Special Edition Wireless > BeatsX >>>> Zolo Liberty
なぜそう感じたか。それは、僕の好みに対してZolo Libertyの音の傾向が合わないから。
主張の強い低音域と、解像感の足りない高音域
僕は低音域から高音域までフラットに出すカナル型イヤホンが好きで、アコギやシンバルといった高音域を綺麗に奏でてくれるものに心が動いてしまいます。だから有線のイヤホンはBAドライバのものを使っていました。
で、このZolo Libertyですが、はっきり言って低音が強すぎます。纏わり付いてくる感じで、聴いててちょっと気持ち悪くなるくらい強いです。申し訳ないけど僕には合わない。
でも比較的締まった低音なので下品さは無いです。そこはGOOD。だから低音バリバリなイヤホンが好きな人には打って付けだと思いました。
それに対して高音域。誤解を恐れずに強い言葉を使いますが、解像感の無さは救いようが無いレベルです。すごくこもっていて、耳とイヤホンの間にフィルターが2〜3枚挟まっているような感じ。自分の耳が悪くなってしまったのか?と思ってしまうほど。
あ、でも一応8,000円分の仕事はしてくれてますよ。価格帯を考えれば相応とも言えますが。値段の割に音がいいという前評判を聞いていただけに、ちょっと残念に思いました。そんな感想。
定位が安定しないことがある
ライブじゃないんだから、ボーカルさんは動き回らずにど真ん中にずっしり構えていて欲しいものです。
なのにこのZolo Libertyで音楽を聴くと、ボーカルが右に左に動くことがあります。嘘だと思うでしょ? 僕も最初は信じられなかった。でもたまに動くことがあるんです。
すばやく動くわけではなくて、のっそりのっそりと動きます。なので言われなければ気づかない場合もあるかもしれません。
おそらく左右のチャンネルの同期がとれていないことが原因だと思いますが、なぜこんな状態の商品を発売に踏み切ったのか。書いているうちに腹が立ってきた。
ホワイトノイズが気になる
音楽を流していないときに聞こえる「さーっ」という音。これをホワイトノイズとよびます。どのイヤホンやヘッドホンでも少なからず存在するものなのですが、Zolo Libertyは特に大きいです。
音楽が流れているときは気になりませんが、電源を入れた直後や曲間の無音の部分など、音が鳴っていないときははっきりと聞こえます。
でもまぁ、音楽聴くことに悪影響を及ぼしてるわけではないので、これについては目を瞑りましょう。
耳から外したら止まってよ
AirPodsは近接センサーを搭載しているので、「耳に入っているかどうか」を判断して電源がオン/オフします。
一方Zolo Libertyは、そのようなセンサーの類は搭載されていなくて、「ケースから取り出されているかどうか」がすべての基準となる。だから取り出した瞬間に電源が入るし、ケースに仕舞うまでは電源入りっぱなし。
どちらが理にかなっているか。イヤホンが「耳に入れて音楽を聴くためのもの」であることを考えると、AirPodsの方に決まっています。だって耳から外しているからといって、必ずしもケースに仕舞うとは限りませんからね。
こんな具合なので、Zolo Libertyには「片方外したときに音楽が止まる」ような機能ももちろん搭載されていません。AirPodsは、例えば誰かに話しかけられたときに片方を耳から取り出せば音楽が止まりますが、そんな機能はないということです。
世界はAirPodsを中心に回っているとか言うつもりは毛頭ありませんが、便利な機能はパクってくれれば良いのにね。
片方ずつ使えないよ!
完全ワイヤレスなイヤホンなのに、これが想定されていないのは本当に謎です。
AirPodsは左右のうち片方ずつ使うことが想定されています。例えば右側だけを耳に入れると、ステレオ音源の左右のチャンネルがミックスされて、モノラルとして右側から出力されます。
だから片方を耳に入れて使って、その間にもう片方をケースに仕舞って充電して、それを入れ替えながら使うと音楽を聴き続けることができるのです。これは本当に便利。
一方、Zolo Libertyは「右chが親機」「左chが子機」と決まっているので、右を経由しないと左に音が飛ばない。また、先述しましたが、近接センサーも搭載されていないので、耳に入っているかどうかも検出されない。
なので右だけ耳に入れて左はケースに仕舞っているような状況でも、左からも音が出ます。しかも逆はできません。また、ミックスされてモノラルにもなりません。
片方ずつ使うことができないというわけではないですが、設計思想においてこのような使い方がそもそも想定されていない。作り込みの甘さを感じて、個人的にはかなり残念なポイントです。
完全ワイヤレスなイヤホンに求められる要素
完全ワイヤレスなイヤホンに求められるのは、音質だけではなくて、そのイヤホンを使うことで得られる「総合的な音楽体験」だと思うのです。
常にポケットに入れておいて、そのケースの中でイヤホン本体が充電されていて、音楽を聴きたいと思ったらさっと取り出して、耳に入れるとiPhoneとスムーズに接続されて、音楽を奏でてくれる。
そのためには、ケースのコンパクトさも重要だし、ケースからの充電速度も気になってくる。耳の中での安定感や、音ズレがしないことも大切。また、バッテリーの持ちも長い方がいいに決まってる。
このように、完全ワイヤレスなイヤホンでは、これまでの有線のイヤホンでは考えられなかった要素がたくさん詰まっています。そういう意味での「総合的な音楽体験」。
左右のイヤホンとケースが互いに通信し合って、さらにiPhoneが加わって三位一体(四位一体?)となって音を奏でてくれる心地よさ。こんな体験ができるAirPodsと比べてしまうのは酷かもしれませんが、Zolo Libertyはどうしてもチグハグな印象を受けてしまいます。
もちろんAirPodsはiOSに組み込まれているからこそ、高レベルな一体感を演出できている部分もあると思います。しかしそれでも、同じ「完全ワイヤレス」というジャンルに参入するなら、AirPodsで得られる体験をベンチマークにしてほしいものです。
個人的には、Amazonで在庫が復活してウキウキで購入して、届くまでの2日間楽しみにしていたので、実際に使ってみて肩すかしを食らった感じです。期待値高めだったんですね。だからその分落差が大きい。
要するに、このZolo Libertyは持ち上げられすぎなんですよ。価格を考えると当たり前なのですが、Ankerのマーケティングのうまさというか、僕も錯覚してしまっていたのは認めざるを得ません。つまり、これから買おうとしている人はあんまり期待しない方がいいよ!ってこと。
Zolo Libertyはどんな人にオススメ?
コンパクトさや使い勝手の良さが求められる完全ワイヤレスなのに、全然使いやすくない。音質が求められるカナル型なのに、大して音質が良いわけでもない。じゃあZolo Libertyの存在価値は?と問われると、「安いこと」。これだけしかありません。
だから以下のような人にはオススメできます。
- 音質は気にしないから、とにかく安い完全ワイヤレスが欲しい人
- 低音バリバリな音が好きで、高音にこだわりがない人
- 「iPhone + AirPods」ほどの使い勝手を求めない人
購入はこちらから。
オススメしない人
一方、オススメしないのは以下の方々。ひとつでも該当する人は買わない方がいいと思います。安物買いの銭失いになりますよ!
- AirPodsの快適さに慣れてしまっている人
- コンパクトな完全ワイヤレスのイヤホンが欲しい人
- 音のいいイヤホンが欲しい人
わかってます。じゃあどれ買えば良いの?ってことですよね。
完全ワイヤレスではケースのコンパクトさは必須中の必須条件です。いくら音質が良くても、ケースが大きかったら検討する価値はないと思います。
その他の要素も勘案して総合的に考えても、やっぱりAirPods一択なんだよなぁ。
ただ、AirPodsはインナーイヤー型なので、音楽に集中したいときには向きません。あくまでも「お手軽に」「BGMとして」聴くことに特化したイヤホンです。
音楽に集中できるカナル型がよければ、左右がつながっているタイプなら選び放題ですよ。例えばSHURE SE215 Wireless。これなら自信を持ってオススメできます。
高音域の音の粒子の細かさはBAドライバを搭載している上位機種に負けますが、少なくともZolo Libertyよりは何倍も良い買い物になると思います。
また、高級有線イヤホン+Bluetoothレシーバーという選択肢もあります。でもこの選択をする人にはわざわざ僕からオススメする必要は無いと思うので、参考記事だけ示しておきますね。
→ 手持ちのイヤホンをワイヤレス化するBluetoothレシーバーの選び方を教えます。
まとめ
評判が良かったので気になって購入してみたZolo Libertyでしたが、まったくの期待外れでした。でもZolo LibertyのおかげでAirPodsの優秀さを知ることができたってことで、感謝はしています。
とはいえ、カナル型の完全ワイヤレスが欲しくて買ったので、しばらくは使ってみようと思っています。