強引に可視化するといいらしいです。
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思考を書き出すって重要?
最近、もっと文章力を鍛えたくて、「20歳の自分に受けさせたい文章講義」という本を読みました。その本の中では、分かりやすい文章を書くための必要条件が語られつつ、そもそも「何を書いて、何を書かないべきか」ということまで論が及んでいます。
ちょっと長いですが、引用します。
誰だって、ブログや日記を書こうとして手が止まったとか、書きたい気持ちはあるけど、なにを書けばいいのかわからないといった経験はあるだろう。
くり返すが、素材や題材を「探す」必要はない。書くべきものはすでに揃っている。問題は、それが見えていないことだ。
見えていないのだったら、話は早いだろう。強引に可視化してしまえばいいのである。目を閉じて頭のなかでごちゃごちゃと考えるから、見えなくなる。ちゃんと目に見える形にしてから”編集”していけばいいのだ。
そして頭の中身を可視化するには、紙に書き出すのがいちばんである。
なるほど、腰を据えて書き出す作業を自分に強制することで、表面化していなかった内なる思考を掻き出そうという魂胆ですね。
確かに、これまで僕は記事を書く前に思考を書き出して整理したり、それをもとに下書きをしたりなどはしていませんでした。ざっくりとした記事全体のイメージが頭の中にあり、その思考を順番にたぐり寄せながら文章化し、1つの記事を書いていました。
でもね、レビュー記事はそれでもいいのですが、思考を整理するようなコラムだとせいぜい2,000字程度の長さが精一杯なんですよ。もっと長い記事を書こうとすると、否が応でも事前に考える作業が必要になるはずなんです。
しかし、これまでそのような作業をしたことがなかったので、どうやって事前に整理したメモから記事につなげればいいのか、やり方が分からないんです。じゃあ実際に、この記事を1本仕上げるにあたって事前に整理してみよう、というのが今回の趣旨。
メモを作ってみた
というわけで、手書きでメモを作ってみました。本の趣旨で言っていることとは若干方向性の異なるメモになりましたが、まあいいでしょう。また、紙ではなく、 iPadの「コンセプト」というアプリです。
まず、「思考を整理するには書き出すのがいいらしい」というテーマで書こうと思ったので、その1文だけ書いておきました。
どのような形式で書くか、どのような内容を書くかなど、この時点でメモの全体像は全く思いついていません。
でも、「思考を整理するには書き出すのがいいらしい」の1文を書いた後に、不思議と脳内で連想ゲームが始まり、10分少々で簡単なメモが完成したんです。この方法、めちゃめちゃいいかもしれない…!
それでは、このメモを使って記事の内容を広げてみましょう。
思考を整理するには書き出すのがいい(らしい)
思考を整理するには書き出すのがいい。
そう聞いたことはあったけれども、あらかじめメモを作ってから記事を書くことはありませんでした。実際に本文をカタカタとキーボードで打ち込みながら、骨格を作っていくような書き方は、たまにやりますが。
でも、紙に書き出すのがいいらしいんです。キーボードじゃなくて、紙の方がいいってこと? だとすれば、それはどうして?——疑問のままで終わらせるのも気持ち悪いので、ここでちょっと考えてみましょうか。
とりあえず、手書きとキーボード、それぞれのメリット・デメリットを3つずつ挙げてみます。
手書きのメリットは「図表を書くのが楽でレイアウトが自由」「カタカタうるさくない」「(その人次第ですが)手書きの文字に味がある」という感じ。特に、図表を書くのが楽なのはいいですね。自分の好きなように書き広げられるのは気持ちいいです。
デメリットは「時間がかかる」「検索できない」「コピペできない」です。手書きよりもキーボードで打ち込んだ方が3倍くらい速く文章を書けるし、手書きだと書いた文章を検索したりコピペしたりできません。
一方、キーボードのメリットは手書きのデメリットの逆で、「作業のついででできる」「腰を据えなくていい」「打ち込んだ文字をコピペしてそのまま使える」です。PC作業のついでで思いついたときに書き留められるし、膝の上にラップトップを置けばどこでも書くことができます。
デメリットは「カタカタうるさい(とクレームが来る)」「図表が書けない」「レイアウトに自由度がない」ですね。僕のせいかもしれませんが、家で作業していると、HHKBのタイピング音がうるさいと奥さんからクレームが来ます。悲しい。
これらをまとめるとこうなります。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
手書き | ・図表を書くのが楽でレイアウトが自由 ・カタカタうるさくない ・(その人次第ですが)手書きの文字に味がある | ・時間がかかる ・検索できない ・コピペできない |
キーボード | ・作業のついででできる ・腰を据えなくていい ・打ち込んだ文字をコピペしてそのまま使える | ・カタカタうるさい(とクレームが来る) ・図表が書けない ・レイアウトに自由度がない |
どちらも一長一短、というよりは、僕は圧倒的にキーボードの方がいいと思っていました。
しかし、実際に手書きで整理してみたところ、実は手書きのメリットがキーボードのメリットを圧倒的に凌駕するのでは…?と思い始めました。自分の中でブレイクスルーが起きた瞬間です。
圧倒的なメリット「レイアウトが自由」
当然ですが、キーボードは文字を入力することに特化したデバイスです。そのため、「あらかじめ指定した枠の中に文字を入れ込んでいく」という作業だけなら、キーボードの方が圧倒的に早い。
しかし、図を描いたり、マインドマップを書いたりするときは、キーボードを使うと作業効率が落ちます。これこそが今回のミソ。
思考を整理しながらラフなスケッチを描くだけで問題ないような場面で、パワポのスライドを作る必要はないんです。「かっちりとしたもの」ではなく、「本人が分かればいいラフなもの」があればいい。
文字しか書かない場面ではキーボードを使うのがいいけれど、思考を整理するような「文字以外」が多くを占める場面では、手書きの方が早い。なぜなら、手書きなら決まった枠の中に入れ込む必要がなく、レイアウトが自由だからです。
このメリットを活かしながら思考を整理するとき、「時間がかかる」という手書きのデメリットよりも、「レイアウトが自由」というメリットの方が上回ると思うんです。
前述したとおり、今回のメモは「思考を整理するには書き出すのがいいらしい」という1文だけを書いて、あとはアドリブで書き進めました。つまり、枠が決まってなかったんです。
こういう場合、キーボードでテキストを打ち込みながら作業を進めるのは難しくなります。決められた枠の中に文字を書くことしかできないので、自分の思考もその枠に囚われてしまいます。
一方、手書きだと枠なんて全くありません。思いついたことをそのとおりに、目の前のキャンバスに描くことができます。線を延ばすもよし、矢印でつなぐもよし。何でもできます。
さらに、僕が使っている「コンセプト」というアプリでは、書いた文字や線を自在に移動することができます。間に書き足したいとか、因果関係に倣って並び替えたいとか、そんなときでも自由にレイアウトを変えることができる。まさに紙を超えた存在です。
これほどの自由さがあると、思考を整理するのにぴったりです。
何のために思考を整理するのか?
「何のために思考を整理するのか?」と考えたとき、僕は「アウトプットの質を高めること」と答えます。
その目的を達成するためには、手書きがキーボードを圧倒していると感じました。確かに文字を書くのはキーボードの方が早いけれど、レイアウトが自由な手書きの方が思考の自由度が高い。作業効率が多少落ちるとしても、最終的なアウトプットの質を高めることができる手法を使うのがいいじゃないですか。
つまり、作業時間とアウトプットの質を天秤にかけたとしても、結果的に手書きの方が勝ります。
キーボードでアイデアを書き留め、手書きで思考を深める
ただ思いついたフレーズを書き留めておくだけなら、キーボードで打ち込んだ方が手軽でいいです。そして、そのアイデアをもとに時間を取って思考を深めるとき、手書きで整理しながら書いていく。その方がいいですね。
アイデアを書き留めるだけなら、パソコンにキーボードで打ち込まなくても、iPhoneのメモアプリに記録しておくだけでも問題ない。そのようなアイデアを深掘りするために、「手書きで整理する」という手法を使うと、自分では言語化できていなかった思考の端くれが顕在化します。
これこそが、「20歳の自分に受けさせたい文章講義」の著者が主張していた「強引に可視化する」ということでしょう。実際に思考を可視化しながら記事を書いてみて、分かったような気がします。