かなりよくなりました。
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CX-60、アップデートで改善される
納車されてまもなく1年が経つMAZDA CX-60。
高速域でのフラットライド感やコーナリング時の安定性は特筆すべきものがあるけれども、低速域におけるドタバタ感については納車時から課題だと書いてきました。1か月時点のレビューで既に以下の3点を指摘したのでした。
- マイルドハイブリッドシステムにおける、走行中のエンジン再始動ラグ
- 減速時のエンジン停止状態におけるブレーキングの難しさ
- 低速域の変速ショックが大きい(1速→2速、2速→3速)
特に③に関しては、15km/hくらいで走っているときにアクセルを抜くと前後に揺られて、まるでバスのようでした。同乗者も気持ち悪かったそうなので早急に改善してもらいたかったポイントです。
これまでの経緯:2023年4月のアップデートで改善
これに対して、4月に制御ソフトウェアにアップデートが入り、少しずつ乗り心地が改善されていました。これはリコールとサービスキャンペーンに関するアップデートです。
このアップデートはエンジンやトランスミッションなどの制御系に関する内容でした。トランスミッションなどのハードウェアに変更はないものの、その制御プログラムにアップデートを入れることによって乗り心地を改善するという、なんとも現代的な手法。
▶ CX-60と暮らす|納車半年、アップデートで乗り心地が変わる稀有な車の現在地
4月のアップデート時は上記の①と③に対して改善を実感していました。当時の記事では「僕がCX-60に感じていたドタバタ感が全て消え去った」と書いていたくらいです。いちばん最初の状態を考えると劇的に滑らかになったからそう感じたのです。
しかし、しばらく乗っているといやいや全然そんなことないなと。アップデートからしばらく時間が経つとかつての状態なんて忘れ去ってしまい、少しだけ残ったドタバタ感が気になってくるものです。
体感的には、最初の状態を〈100ドタバタ〉だとすると、4月のアップデートで〈30ドタバタ〉くらいになったのかな。7割減だから大きく改善したように思えたけれども、実際にはまだ30も残っていたのです。乗っているうちにそれが気になってくる。
再アップデート:2023年10月
そして、それから半年が経った10月にも同様にリコール・改善対策とサービスキャンペーンが入りました。
リコールは以下の内容に関するアップデート。後退時にバックカメラが起動しないのは2回ほど遭遇したことがあるのですが、その不具合だったのでしょうか。
- エンジン制御コンピュータにおいて、ハイブリッドシステムの起動条件が不適切なため、プッシュボタンスタートをオフしてから約8秒後にオンして再始動した場合、マイルドハイブリッド用バッテリーのリレー回路が接続できないことがあります。そのため、メータに「ハイブリッドシステム異常」のメッセージが表示され、エンジン警告灯も点灯してトランスミッションがNレンジに固定され、走行できなくなるおそれがあります。また、プッシュボタンスタートをオフしてから約90秒以内はエンジンを始動できません。
- エンジン制御コンピュータにおいて、故障判定する条件が不適切なため、アイドリングストップによりエンジンが停止する際、アクセル操作等でエンジン停止が中断されると、一時的に燃料噴射気筒を正しく判定できなくなることがあります。そのため、その時に故障として誤判定することで、燃料噴射を禁止し、燃料噴射気筒を正しく判定するまで燃料が噴射できず、走行中の場合は車両が減速し、停車中の場合はエンジンが再始動できないおそれがあります。
- 電気駆動制御コンピュータにおいて、フェイルセーフの作動条件が不適切なため、プラグインハイブリッド用インバータの冷却異常が発生した場合にモータの運転を制限しても、インバータが過熱することがあります。そのため、そのまま使用を続けた場合、エンジン警告灯やハイブリッドシステム警告灯が点灯し、フェイルセーフが作動してモータの運転を停止する際、同時にエンジンの運転も停止し、走行できなくなるおそれがあります。
- ビューモニターユニットにおいて、システムの起動条件が不適切なため、起動時にサイド及びバックカメラに切り替えるシステムが起動しないことがあります。そのため、i-ACTIVSENSE警告灯が点灯し、ビューモニターユニット異常を知らせるメッセージがメータ内ディスプレイに表示されます。また、サイド及びバックカメラの映像が表示できないおそれがあります。
- ビューモニターユニットにおいて、システムの処理条件が不適切なため、再起動時にメモリをリセットできないことがあります。そのため、メモリ不足により画像処理が遅くなり、センターディスプレイの映像が乱れ、黒画になることで、サイド及びバックカメラの映像が表示できないおそれがあります。
改善対策はレーダーセンサーに関するアップデートです。僕も実際に後退時に障害物がないにもかかわらず急制動がかかる場面に何回か遭遇してびっくりしたことがありました。それが改善されたのかな。
サイドレーダーセンサにおいて、情報処理プログラムが不適切なため、センサが電波を出す角度を補正するための記録情報が、システム遮断時に消失することがあります。そのため、センサが対象物の位置を正しく認識できず、前進あるいは後退時に警報音や被害軽減ブレーキが作動しないおそれがあります。また、衝突の可能性がないにもかかわらず、警報音が鳴り、最悪の場合、急制動がかかるおそれがあります。
そして、サービスキャンペーンは以下の5点に関するアップデート。今回もトランスミッションに対してアップデートが入ります。
特筆すべきは、今回は初めて「変速ショック」や「ギクシャク感」が発生することに言及されており、メーカー側も不具合として認識していることが分かりました。これは大きな進歩です。
ちなみにOTA(Over the Air:モバイル回線経由でのアップデートのこと)ではなく、ディーラーに1時間ほど入庫してアップデートしてもらいました。OTAにも対応してもらえたらもっといいのにね。
- エンジン制御コンピュータにおいて、故障判定する条件が不適切なため、PレンジやNレンジでのアイドル運転時に、吸排気圧センサに異常があると誤判定することがあります。そのため、エンジン警告灯が点灯すると共にフェイルセーフ機能が作動してアイドリングストップが作動しなくなるおそれがあります。また、エンジン出力と過給制御の制限により、加速不良が発生するおそれがあります。
- エンジン制御コンピュータにおいて、低圧EGR(排気ガス再循環装置)のフィードバック量の設定が不十分なため、高速登坂中に緩加速する等した場合、ターボチャージャの吸気側に導入される低圧EGRガスに圧力変動が発生し、低圧EGRガスが流れにくくなることで故障判定し、エンジン警告灯が点灯するおそれがあります。
- エンジン制御コンピュータにおいて、制御プログラムが不適切なため、停車中に低外気温になるとEGRバルブに付着した凝縮水が氷結し、エンジン始動時にバルブが開かず、エンジン警告灯が点灯することがあります。そのため、フェイルセーフ機能が作動してアイドリングストップが作動しなくなるおそれがあります。また、エンジン出力の制限により、加速不良が発生するおそれがあります。
- トランスミッションにおいて、製造工程での油圧学習が不適切なため、学習値にずれが生じたものがあります。そのため、クラッチを締結する油圧の追従性が低下し、変速ショックや走行中のギクシャク感が発生するおそれがあります。
- ドライバー・パーソナライゼーション・システム搭載車のボディ・コントロール・モジュールにおいて、制御プログラムが不適切なため、後付け用品のドライビングサポートプラス専用キーを使用した場合に、ドライバー・パーソナライゼーション・システムと連携できません。そのため、ドライバー・パーソナライゼーション・システムのドライバー登録ができません。また、ドライバー変更時にセンターディスプレイの画面がフリーズし、30秒間ナビやオーディオ等を操作できません。
効果を実感、だけどあと一歩
実際にどうだったのかと言うと、乗り出した直後、ディーラーから自宅に向かって運転しているときに手に取るように分かるくらいには改善されました。そうそう、これだと文句はないんだよ!
上でも挙げた課題リストに則って評価してみると——
- マイルドハイブリッドシステムにおける、走行中のエンジン再始動ラグ
- 減速時のエンジン停止状態におけるブレーキングの難しさ
- 低速域の変速ショックが大きい(1速→2速、2速→3速)
大きく改善されたのは③に関するものです。加速時の変速ショックも抑えられているし、15km/hくらいで走っているときにアクセルを抜くと前後に揺られるバスのような動きも少なくなっています。でもあくまでも「少なくなった」なんですよ。
かなり抑えられているけれど、完全になくなったわけではない。最初は〈100ドタバタ〉だったのが4月のアップデートで〈30ドタバタ〉になり、今回のアップデートで〈10ドタバタ〉になった感じ。
確かにマイルドになったんだけど、まだ10残ってるのよ。あと一歩、マツダさんがんばれ。
エンジン再始動ラグは気にならなくなった
一方、①のエンジン再始動ラグはほとんど気にならなくなりました。
僕が乗っているCX-60 XD-HYBRID Premium Modernには、ディーゼルエンジンとモーターを組み合わせたマイルドハイブリッドシステムが搭載されています。
このシステム、走行中にアクセルを抜くと高確率でエンジンが止まってモーターだけの走行に切り替わります。そのあと再度アクセルを踏み込むとエンジンが再始動して加速するのですが、その再始動にラグがあり軽くブレーキがかかったような感覚を覚えていました。
今回のアップデートで再始動のタイミングがチューニングされたのかトランスミッションの処理が変更されたのか、スムーズに再始動して加速できるようになりました。これはかなり熟成されてきたね。
エンジン停止状態のブレーキングも少しだけ簡単に
上記のとおり、例えば前方が赤信号になってアクセルから足を離すと、エンジンが止まってモーター走行に切り替わります。その後、ブレーキをかけて減速していきますが、モーター走行のみで停車まで持っていくことができます。
停車の際は、カックンブレーキにならないように、速度がゼロになる瞬間にブレーキを抜きたいんです。でも、CX-60の場合、ブレーキの踏力が一定以下になるとモーターのみの走行がキャンセルされ、エンジンがかかるような制御になっているのです。そして、エンジンがかかるとクリープ現象が発生して車が前に出ます。
カックンブレーキにならないようにブレーキを抜きたい。でも抜きすぎるとエンジンがかかってしまい、クリープ現象によって前に進んでしまう。だから、「できるだけカックンにならず、エンジンがかからない範囲内」で、ブレーキを緻密に制御する必要があります。このせめぎ合いがかなり難しかった。
今回のアップデートで、これが少しだけ簡単になりました。引き続き難しいことに変わりなくて、気を抜くとエンジンがかかってしまいますが、アップデート前よりは全然マシ。
さらなるアップデートに期待
プラットフォームもパワートレインもトランスミッションも、何から何まで初めてづくしのCX-60だったから、ある程度の不具合や煮詰め不足は想定していましたが、こんなに根が深くて解決までに長引くものだとは思っていませんでした。
ニュースをキャッチアップする限り、メーカーとしては既存ユーザーにも継続的にアップデートを提供してくれるスタンスのようだから、この部分は安心ですね。前回が4月で今回が10月だったから、半年サイクルでアップデートしてくれる感じなんですかね。
だからさらなるアップデートに期待!——と書きたいところですが……
こんなに煮詰め不足の状態でリリースし、そのあとに何度もアップデートを入れてしまうと、ユーザーでベータテストをやっているように思えてなりません。初めてづくしの車に600万円も出して買うユーザーは、そのブランドのファンである可能性が高いのに。そんなユーザーでベータテストをやっていいの?と思ってしまいます。
改善してもらえるのはとてもありがたいんだけど、スケジュール重視で見切り発車で発売したとしか思えないんですよね。今回のアップデートでかなりよくなったから、最初からこの状態だったら何も問題なかったんだけど。
個人的には長距離移動の楽さを重視したいから、そのような観点ではCX-60に満足しています。だから今回アップデートが入ったような低速域でのギクシャク感は、俯瞰的に見ると目を瞑ってもいいと思えるものなのです。
それでも気にならないと言ったら嘘になるので、今後のアップデートにも期待して待ちます。
チューニングに時間がかかるのは理解するし、今どき楽しい直列6気筒ディーゼルターボの新型車を出してくれるマツダのスタンスには大いに共感するので、応援の意味も込めて待っておきたいと思います。